MLB マンフレッド・コミッショナーは本当に悪者か?

[ 2022年3月4日 07:30 ]

マンフレッド・コミッショナー(AP)
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 大リーグ機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナーがSNS上で大炎上した。3月1日。予定通りに開幕するため合意期限を1日延長して労使交渉に臨んだが、新労使協定の妥結には至らず開幕2カードの中止が決定。交渉の休憩中にゴルフスイングの練習をしたり、会見で笑みを浮かべたりした姿が選手、ファンの怒りを買った。

 緊張感が足りないと思われても仕方がないだろう。米スポーツサイト「ジ・アスレチック」で労使交渉の取材を担当するエバン・ドレリッチ記者も「マンフレッド・コミッショナーは余計なことを言ってしまう癖があり、悪目立ちする傾向がある」と指摘する。過去には17年のワールドシリーズを制したアストロズの不正なサイン盗み問題をめぐり、優勝トロフィー返還が議論された際には「トロフィーは単なる金属の塊」と発言し、批判の的となったこともある。

 記者は2018年からスポニチのMLB担当になって今年で5年目を迎える。マンフレッド・コミッショナーを対面取材したことはなく、キャンプ中の記者会見を遠巻きから見ていたことがある程度のため、真の人間性は分からない。ただ、高圧的な雰囲気は感じたことがなく、どちらかというと穏やかな印象だ。特に昨年10月下旬のワールドシリーズ初戦前にコミッショナー特別表彰を授けたエンゼルス・大谷とともに参加した記者会見では、終始、優しい笑顔を浮かべ好印象を受けたことを、オンライン視聴ながら覚えている。

 就任7年目で初めて同賞を授与したマンフレッド・コミッショナーは、大谷について「あまりにも特別だった。この1年を称えないのは間違い」と絶賛。コロナ禍で野球の国際化戦略が停滞する中での二刀流の活躍を評価し「翔平のような国際的スターの出現は我々にとって完璧なタイミングだった」とうれしそうに話していた。

 SNS上で「ファンの気持ちが分からない」、「退任すべきだ」、「野球を台無しにした」などと大批判にさらされているマンフレッド・コミッショナー。だが、野球を愛していなければ、弁護士出身ながら1987年から30年以上も大リーグ機構(MLB)の仕事に携わっていないはずだ。よりよい野球界をつくるために力を尽くしている。今はそう信じるしかない。(記者コラム・柳原 直之)

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2022年3月4日のニュース