世界が「フルさん」に別れ…プールサイドで黙とう

[ 2009年8月3日 09:37 ]

世界水泳選手権最終日の競技開始を前に、古橋広之進氏の死を悼み黙とうする国際水泳連盟の関係者と観客ら

 世界水泳選手権が開幕してから晴天続きだったローマに、巨星の死を悼むかのように雨が降った。「先生」「フルさん」―。大会最終日の2日、80歳で急逝した日本水泳連盟の古橋広之進名誉会長に、世界中から集った水泳関係者が別れを告げた。

 「寝ているみたいだった」。日本水連の佐野和夫会長(69)は2日朝、ローマ郊外にあるホテルの部屋で古橋さんが亡くなっているのを発見した。佐野会長は、次々に駆けつけた国際水泳連盟の関係者らに強く抱き寄せられて「大丈夫か」と声を掛けられた。
 国際水連が同日夕に開いた大会総括の記者会見で、フリオ・マグリオーネ会長(73)は「大事な友が逝った。フルさん(古橋氏の愛称)が水泳にそそぐ情熱は、世界中で見本とされた」と神妙な面持ちで話した。夜の決勝前に、理事全員がプールサイドに並び、1万人を超える観客とともに黙とうをささげた。
 日本の選手たちは、午前の予選が終わった直後の緊急ミーティングで悲報を知った。男子50メートル背泳ぎ決勝で100メートルとの2冠を狙った古賀淳也選手(22)は、2位に終わったレース後に「世界新記録で古橋先生を送り出したかった」と話した。古賀選手は「古橋イズムとは」と聞かれ「伝統を重んじること。日本人らしさをしっかり受け継ぎたい」と口元を引き締めた。

 ▼フリオ・マグリオーネ国際水泳連盟会長の話 友を失い、悲しい。(古橋氏は)「フルさん」の愛称で呼ばれ、誰からも尊敬されていた。水泳への情熱は、世界中で手本とされた。賢く、親しみやすい人格者だった。

 ▼日本水泳連盟の佐野和夫会長の話 アジア、世界の水泳界にとって大変重要で偉大な古橋さんを失った。深い悲しみとともに心からご冥福を祈りたい。この悲しみを乗り越えていかないといけない。

 ▼競泳日本代表の上野広治監督の話 選手としても選手(を引退)後も、ここまで水泳界に貢献された方はいない。(2日昼の)ミーティングで古橋先生に恥じないレースをしようと話した。

 ▼競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチの話 僕は「世界を目指すなら脇目もふらずに挑め」という古橋イズムで北島(康介)の指導もやってきた。(古橋氏は)僕らと一緒に世界選手権を戦ってくれて、亡くなったと思っている。(共同)

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2009年8月3日のニュース