海老蔵 31日に十三代目團十郎襲名 成田屋3世代を知る山川静夫氏がエール

[ 2022年10月31日 05:05 ]

十三代目市川團十郎白猿
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 歌舞伎俳優の市川海老蔵(44)が、31日に十三代目市川團十郎白猿を襲名する。きょう31日とあす11月1日に東京・歌舞伎座で行われる襲名記念の特別公演が團十郎としての初舞台となる。

 9年ぶりに復活する大名跡の誕生に古典芸能界が沸く中、数々の歌舞伎関連の著作を出しているフリーアナウンサーでエッセイストの山川静夫氏(89)は「スケールの大きな役者になってほしい」と本紙を通じてエールを送った。

 十一代目、十二代目の芸に造詣が深く、海老蔵と小林麻央さんの結婚式では司会を務めるほどの間柄。成田屋3世代を知る立場として海老蔵について「あれほど恵まれた容姿はない。中でもよく動く大きな目は江戸時代から続く荒事(あらごと)を担う團十郎にふさわしい。その目つきから放たれる見得(みえ)は確実に観客に届いている」と素質を称えた。

 海老蔵は、16歳の時にビデオで見た祖父・十一代目の芸に憧れ歌舞伎俳優として生きる運命を受け入れた。2010年には暴行事件に巻き込まれ、温厚な性格で知られていた父の十二代目を激怒させたことも。17年には麻央さんとの死別も経験。本人も「精いっぱい(海老蔵を)生きた」と振り返っている。

 そんな姿を見てきたからこそ、山川氏は「十一代目からは芸を、十二代目からは人柄を受け継いで、十三代目を生きてほしい」と願う。「十一代目は役者としては不器用な面もあったが、登場した瞬間に観客を魅了し劇場を支配するような存在感と、それを裏付ける努力があった。そこに十二代目の優しく懐の深い人柄が加われば、今よりもっと顔も芸も良くなるだろう」と分析している。

 團十郎を名乗ることは、成田屋だけでなく歌舞伎界そのものを引っ張っていくことも意味する。近年は歌舞伎ファンを増やすべく積極的に自主公演などを行ってきた海老蔵。山川氏は「歌舞伎座での公演も今後もっと見たい。團十郎として歌舞伎界を盛り上げていってほしい」と期待を込めた。

 《「勧進帳」に出演 勸玄くんは来月「新之助」初舞台》海老蔵は、きょう31日から2日間開催される特別公演で「勧進帳」に出演する。その後、11月7~28日の「十一月吉例顔見世大歌舞伎」、12月5~26日の「十二月大歌舞伎」と歌舞伎座で襲名興行が続く。来年1月には東京・新橋演舞場で「市川團十郎襲名記念プログラム」と銘打ち「初春歌舞伎公演 SANEMORI」を上演する。長男の堀越勸玄くん(9)は、11月の公演が八代目市川新之助としての初舞台となる。

 《海老せんべい発売》坂角総本舗は、襲名を記念して特別パッケージの海老(えび)せんべい「ゆかり詰合せ箱 市川團十郎」=写真=を発売する。箱には「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」の文字と成田屋の定紋が印刷されている。伊藤真広営業企画課長(34)は「海老つながりということで、先方さまよりお声がけいただきました」と経緯を説明。来月7日から始まる襲名興行に合わせ、同所とオンラインで発売する。

《「市川團十郎」とは》400年以上続く歌舞伎の歴史の中、「市川團十郎」という名跡は、約350年間江戸歌舞伎を引っ張ってきた。その象徴となるのが「荒事」と呼ばれる豪快で迫力のある芝居。江戸時代初期に活躍した初代は「荒人神(あらひとがみ)」と呼ばれ崇拝の対象に。屋号の「成田屋」も、子に恵まれなかった初代が千葉県成田山新勝寺で子宝祈願を行い、その後二代目を授かったことに由来する。

 「見れば1年間無病息災」として知られている「にらみ」も成田屋に伝わる見得の一つ。新勝寺が祭る不動明王にそのルーツがあると言われている。

 現在まで伝わる演目の多くを歴代の團十郎が作ってきた。七代目が「歌舞伎十八番」を制定し、その後「劇聖」と称された九代目が「新歌舞伎十八番」として現在の形へと継承した。

 今回、海老蔵が名乗る「白猿」は五代目が俳句を作る時に名乗っていた名前。十三代目の襲名にあたり海老蔵は「祖父や父たちの足元にも及ばないという気持ちを込めた」とその由来を語っている。
 

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