大河「麒麟がくる」 染谷将太の“仏リュック”と長谷川博己の苦笑い

[ 2020年11月15日 20:55 ]

15日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で仏を背負った織田信長(染谷将太)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】シュールなシーンだった。15日放送のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」で、俳優の染谷将太(28)が演じる織田信長が、木彫りの仏を縄で背中にくくりつけて登場した。まるでリュックサックでも背負っているかのよう。大河史上屈指の異色場面だ。

 近江・坂本の堂での一場面。信長は怒りに満ちたうめき声を上げて座っている。立ち上がると、その背には縄でくくりつけた仏。いかにも重たそうだが、怒りにまかせて周りの円座を次々と蹴散らしていく。

 長谷川博己(43)が演じる明智光秀が姿を見せると、信長は、訪れていた比叡山延暦寺の僧兵たちから「一歩でも近づけば5万の僧兵が立ち向かう。僧兵は一人一人が仏を背負って戦うゆえ、開山以来負けたことがない」と脅されたことを打ち明ける。

 討つべき相手の朝倉義景を延暦寺が保護したという展開。信長は僧兵たちに対し、実際に仏を背負った上で「神仏を尊ぶ心は、わしも同様。踏み込むおりは、こうして仏を背負うて参る所存じゃ」と脅し返したことを光秀に伝えた。

 このシーンを考案したのは、脚本の池端俊策氏。演出した深川貴志氏は「信長の恐れを知らぬ気性だけでなく、比叡山をどのように捉えているかを言葉で語ることなく、一目で分からせる見事な表現だと思う。信長包囲網が形成される中で、信長のいらだちが濃縮されて表現されている」と説明する。

 信長が背負った木彫りの仏は、もともと堂に安置されていたもの。このシーンをよく見ると、信長の奥にある厨子(ずし)が空になっている。

 先月18日の放送では、信長が城の建築現場に運び込まれた石仏の頭と顔を手でたたく場面があった。この時、光秀は信長に対して違和感を覚えた表情を見せたが、今回は苦笑いを浮かべて「仏は重うございませぬか?」と尋ねた。光秀が以前より信長に同調したような印象だ。

 深川氏は「光秀の苦笑いには2つの理由があると思う」と話す。その一つは、前回の放送で描かれた金ヶ崎の退き戦での経験。「自らが命の淵に立った時、仏や神に祈るというより、信長を生かすことしか頭になかった。死戦を超えて信長と再会した時、大きな世、平らかな世をつくるには、やはりこの人しかいないと思ったはず。光秀にとって信長は、神仏をこえた存在になった」と指摘する。

 もう一つは信長の性格のおかしさ。深川氏は「光秀は、信長が神仏をなんとも思わないとしながらも僧兵にいらだったり仏像を背負ったりと、誰よりも神仏にとらわれた行動をすることに苦笑いした」と話す。

 次回の放送では、いよいよ信長、光秀らが比叡山に攻め込む。それがどれほど異常なものになるのか…。“仏リュック”はその予告でもある。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2020年11月15日のニュース