鶴見辰吾、先達の愛に育まれてできた百面相 「演技のデパート」その先の理想を求めて
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【俺の顔】善悪、硬軟自在の振り幅の広さで「演技のデパート」と称される俳優の鶴見辰吾(55)。先達から受けた薫陶を経験値とし、醸成させていくことで自らのスタイルを確立した。12月4日公開の映画「サイレント・トーキョー」では、ついに首相に“就任”。それでも飽くなき探求心で「画面に出てきた時に、僕だと分からないくらい作品の中に溶け込む」という究極の理想に向け突き進んでいる。 (鈴木 元)
「俳優は料理の素材だと思っています。それをいかに調理していただいて、お客さんにおいしく召し上がっていただくか。常に今日のおかずに取り上げていただけるような歯応えのある、味のある俳優でいたい」
俳優としての現在の信条を語る表情には、確固たる自信がうかがえる。
幼少期に、宝塚ファンの伯母に連れられ舞台を見たことで演技に興味を持つ。その伯母が応募した77年「竹の子すくすく」のオーディションで、片平なぎさの弟役に抜てきされた。
「書類審査が通って、学校を早退できるかという話になったんです。その日は体育の授業でちょっと怖い先生だから嫌だったんですけれど、片平さんに会えるかもしれないと言われてその気になって、ちょっと行ってみようかなという感じでした」
中学1年でデビューし、79年の「3年B組金八先生」、翌80年の初出演、初主演映画「翔んだカップル」(監督相米慎二)で一躍脚光を浴びる。だが、役者としての自覚は乏しかったという。その意識を変えたのが、山田太一氏(86)脚本の83年「早春スケッチブック」。共演した山崎努(83)の希望で楽屋を同じにして徹底指導を受けた。
「演技プランということを初めて聞いたんです。それが非常にクリエーティブで、それまでは与えられた役を学校の宿題のようにやればいいと思っていたんですけれど、もっと積極的に作品に関わることによって見え方が違ってくるし、楽しさも変わってくる。山崎さんにはかなり厳しく鍛えられました」
だが、その後も青春ドラマで主人公の恋敵など似たような役が続く。70年代に米映画「ダーティハリー」や「フレンチ・コネクション」に憧れた世代にとってはフラストレーションが募った。
「自分の理想と違うところに立っている焦燥感はありましたね。20代の後半に根津甚八さんと飲んでいる時にそんな話をしたら、その場で石井隆監督に電話してくれたんです」
その席で、映画「天使のはらわた 赤い閃光」(94年)への出演が決まり、翌95年の「GONIN」で演じたやくざ・久松で強烈なインパクトを残した。
「子供の頃からやってみたかったハードボイルドアクションに出られるようになって、そこから役が広がっていきました。でも、そう簡単にはいかなかったですよ。石井さんが根気強く、キャラクターをつくり上げるために粘ってくれました」
犯罪者など悪役も増えていったが、ここで中学の時の体育教諭に再び登場願う。自身の結婚披露宴での「鶴見は明るくて面白いヤツなので、あまり犯人役はやらせないでください」というスピーチに大きな気付きを得たのだ。
「子供の頃から見ている先生がそう言ってくださった。ハートウオーミングで人を和ませるような役を演じることも大事だし、何でもできるようにならなければダメなんだと感じたんです」
以降、活躍は日本にとどまらず、11年「マイウェイ 12,000キロの真実」で韓国映画に初出演。16年「密偵」では、名優ソン・ガンホ(53)と堂々渡り合った。ベテランと呼ばれる領域に入ったが、理想に向けてはますます貪欲だ。
「誰だか分からないくらいに変貌した登場の仕方ができたらと常々思っているんです」
多彩な演技は、さらに円熟味を増しそうだ。
《首相役に“安倍先輩”意識、映画「サイレント・トーキョー」 》「サイレント・トーキョー」で演じた磯山首相は、爆弾テロに断固屈しないと強硬な姿勢を見せる設定。大学の先輩が安倍晋三前首相だったこともあり「脚本が当時の安倍さんを意識せざるを得なかったので、寄せることはしませんでしたが、安倍さんの流れをくむ感じは意識しました」と苦笑交じりに明かす。佐藤浩市(59)ら主要キャストと絡むシーンはなかったが、渋谷がテロの主な標的となる映画については「スリリングな展開で、実際に知っている街が舞台だからかなり迫ってくるものがあった」と満足げだった。
◆鶴見 辰吾(つるみ・しんご)1964年(昭39)12月29日生まれ、東京都出身の55歳。77年、テレビ朝日「竹の子すくすく」でデビュー。79年、TBS「3年B組金八先生」の宮沢保役で注目される。80年「翔んだカップル」で映画初出演、初主演。以降、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。来年も「奥様は、取り扱い注意」「太陽は動かない」など多くの映画の公開が控える。
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