羽生竜王 編入プロの瀬川五段と対談「年齢関係ないという道つくった」功績称賛

[ 2018年8月3日 06:10 ]

対談した羽生竜王(左)と瀬川五段
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 将棋の羽生善治竜王(47)と、史上初めて奨励会退会からプロ編入試験で合格した瀬川晶司五段(48)が3日、都内で対談した。瀬川五段の自伝的作品を映画化した「泣き虫しょったんの奇跡」の公開記念イベントで実現した。羽生竜王は、35歳でプロになった瀬川五段を「年齢は関係ないという道をつくったのは大きなこと」と功績を称えた。

 羽生は国民栄誉賞を受賞した将棋界のエリート中のエリート。一方の瀬川は84年に14歳でプロ棋士の養成機関「奨励会」に入門したものの、26歳までにプロに転身できず、96年に年齢制限で退会。会社員などを経て編入試験でやっとプロとなった雑草棋士。対局したことはないが、同世代とあって話が弾み、羽生が瀬川を質問攻めにした。

 「聞いてみたかったんですよね」と切り出し「(奨励会退会後に)アマからプロを目指した時、強くなったという実感はあった?」と質問。瀬川は「奨励会の時は年齢制限もあって、将棋がちぢこまっていました。アマチュアでは、純粋に将棋を楽しもうと思ったら、指し手が積極的になりましたね」と説明した。

 さらに、6局中3勝すれば合格の編入試験についても「どういう気持ちだったの?」と興味津々。瀬川は「1局目に負けた時は、4連敗したら応援してくれた人たちに申し訳ないと思いました。そんな時に小学校の先生から手紙をもらって、結果がどうなっても自分にとっていい道になると思えました」と明かした。

 その後、瀬川は「そういえば、まだお礼を言っていませんでした」と羽生に語りかけた。61年も開催されていなかった編入試験の実現に向け周囲が奔走していた際に、羽生が将棋雑誌で「プロになるのに年齢は問わないでいいのでは」という趣旨の発言をしたことが追い風になったと感謝。「羽生先生のおかげです。その節は…」と頭を下げると、羽生は「いえいえ、年齢は関係ないという道をつくったのは大きなことですよ」と瀬川を称えた。

 話題は国民栄誉賞にも及んだが羽生は「首相官邸に入るのもなかなかないことなので、緊張はしましたよ」と淡々。「それよりも、自分の人生が映画になることもなかなか経験できないですよね」と話し、瀬川は恐縮。お互いの歩んできた道を思いやる和やかなムードで対談を終えた。

 ▼映画「泣き虫しょったんの奇跡」 小学生の頃から将棋一筋だった瀬川晶司は、奨励会に入りプロを目指すが「26歳までに四段になれなければ退会」という規定で退会を余儀なくされる。だが、夢を諦めきれずアマチュアとして実績を積み、プロ編入試験を実現させる。瀬川役は松田龍平(35)が演じ、RADWIMPSの野田洋次郎(33)、永山絢斗(29)、妻夫木聡(37)らが共演。9月7日に公開される。

 ◆羽生 善治(はぶ・よしはる)1970年(昭45)9月27日生まれ、埼玉県所沢市出身の47歳。85年史上3人目の中学生プロに。89年竜王戦で初タイトル獲得。96年王将戦で初の全7大タイトル同時制覇を達成。2017年12月に史上初の永世7冠を達成した。タイトル獲得は歴代最多の通算99期、現在竜王位。今年2月、国民栄誉賞受賞。

 ◆瀬川 晶司(せがわ・しょうじ)1970年(昭45)3月23日生まれ、神奈川県出身の48歳。奨励会退会後に神奈川大第二法学部に入学。31歳で卒業後、NECの関連企業でシステムエンジニアとして勤務。アマチュアで腕を磨き、05年に61年ぶりに開催された編入試験を突破し、プロ入りを果たした。06年に自伝的小説「泣き虫しょったんの奇跡」を刊行し話題となった。

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