「孤狼の血」白石監督の思い 役所広司と「もう一度仕事を」相棒役は松坂桃李しか…

[ 2018年5月11日 13:50 ]

大阪市内でスポニチ本紙取材に応じた白石和彌監督
Photo By スポニチ

 12日公開の映画「孤狼の血」は、役者、スタッフ、配給・東映の本気、おとこ気が伝わる1作だ。警察小説×「仁義なき戦い」と評される同名小説の映画化で、監督に指名されたのは白石和彌氏(43)。「凶悪」などを手掛けた鬼才を、大阪市内で直撃した。

 主演・役所広司(62)とは初タッグ。最近は人格者を演じる事が多い重鎮に、暴力団との癒着が騒がれる広島県警の粗暴なマル暴刑事を演じさせた。「“シャブ極道”の頃のイッちゃってる役所さんを、また見たかったんです」。

 広島弁でギラギラした役所の存在感は、劇中でも現場でも圧巻だった。暴力団員役の江口洋介(50)や竹野内豊(47)ら豪華布陣も、振り切れた役所の演技に乗せられ、「オレらもヤクザ役なんだし、もっとやっていいよね」と熱くなった。白石氏は「役所さんとはもう一度仕事したい」と熱望した。

 役所の相棒刑事には松坂桃李(29)。白石氏の手にかかれば、さわやかな二枚目が一変する。前作「彼女がその名を知らない鳥たち」では最低のゲス男、今回も相方や暴力団に翻弄(ほんろう)される残念な男の成長を熱演。実は白石氏、以前は松坂を「あんまり好きじゃなかった。髪ふわふわさせやがって…と」と笑う。だが、舞台「娼年」でぬれ場も堂々とこなす姿に「5、10年後にどんな役者でありたいか、ちゃんと考えている人だ」と感心した。

 「松坂君をイジリ倒した」と語る前作“かの鳥”で、彼のさらなる潜在能力に大いに気づかされた白石氏。今回、「役所さんとバディを組める若手は数少ないし、経験できたヤツは今後の日本映画を引っ張る存在になる。松坂君しか思い浮かばなかった」という。松坂には「クズ役の依頼が増えた。監督のせいですよ」と言われる。「どんどんイケメンじゃなくなるんだろうな(笑い)。今後が楽しみ」と期待した。

 R15指定で目をおおいたくなる場面もあるが、ただの暴力映画ではない。そこには正義もあり、愛もある。コンプライアンス重視の時代に、過去の実録映画や韓国映画の過激描写にも負けじと挑んだ白石氏の気概を、見届けてほしい。

続きを表示

2018年5月11日のニュース