【夢中論】51歳で初めて父に…高橋克実 子育てはトリビアの泉

[ 2017年5月2日 09:45 ]

ゆりかごダンスを披露する“イクメン”高橋克実。子育ては大変だが、多忙な日々に舞台への情熱は燃えるばかりだ
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 俳優の高橋克実(56)は51歳で初めて父親になり、生活も人生観も変わった。俳優業に加え、フジテレビの情報番組「直撃LIVE グッディ!」の司会も務めるハードなスケジュールの中、4歳と、もうすぐ2歳の2児の子育てに奮闘中。日々成長する子供と向き合うことを楽しんでいる。小劇場出身の生粋の舞台人。多忙な日々がなおさら、舞台への情熱を燃やしている。 (飛澤 美穂)

 朝5時半。まだ寝ていたいのに、子供たちに起こされる。「あの人たちは夜8時頃から十分寝てるけど、こっちは稽古が終わってセリフを覚えたりして寝るのは深夜0時すぎ。5時間くらいで起こされて寝不足です」

 11年に14歳下の女性と再婚し、12年9月に長男、15年5月に長女が誕生。子供が生まれ、生活が一変した。「前は毎日飲んで歩いてたけど、子供ができて飲む機会がずいぶん減ったので規則正しくなった。年を取ると寝られなくなるっていうけど、若者みたいに眠れます。子供を寝かせながら、気づいたら朝まで一緒に9時間くらい寝たり。疲れてるんでしょうね」

 おむつも替えるし、朝は保育園に送っていく。自転車で息子を後ろ、娘を前のチャイルドシートに座らせ出発。到着したら、先に降りて動き回る息子に「動かないで!動かないで!」と注意しながら、娘が脚をばたつかせ自転車が転倒しないよう必死だ。「なかなか気が抜けないですよ。朝からバッタバタしてます」

 長女が生まれる2カ月前に「グッディ!」が始まり、平日午後1時45分から2時間を超える生放送に出演。午前11時すぎにフジテレビに入って準備し、放送が終われば舞台の稽古やドラマの収録など俳優の顔になる。自分の時間は寝る前の1〜2時間と、子供を保育園に送った後の1時間くらい。そこでは録画した番組をチェックし、移動中に新聞や台本を読むなど息つく暇もない。

 50歳まで時間も情熱も仕事に注いできたが、子供中心の子煩悩な父親に変身し「自分でもびっくりします」。息子の宿題も一緒にやり、今はそろばんにはまっている。「1、2、3、4って玉を上げて、5になったら下がるんだって教えて。“なんで5がないの?”って聞かれて、そういえば俺が子供の頃は5つ玉だったから“何でだろう”ってグーグルで調べて説明する。自分の成長にもなるし面白い」。子供ならではの固定観念に縛られない発想にも刺激を受ける。「数字の“1”を下から書いていたので“上から書くの”って教えたら“なんで?”って聞かれた。こういうのって大人の日常にはない。だから楽しいんです」

 慌ただしい日々の中で再認識したのは舞台への思い。高校卒業後、予備校に通うために上京したが、故松田優作さんに憧れて勉強もよそに役者の道を志し、26歳の時に劇団「離風霊船(りぶれせん)」に参加。37歳の時にフジテレビのドラマ「ショムニ」で注目されるまで、不動産の看板を立てる仕事やディスコの黒服、車庫入れ係などアルバイトで生計を立てながらの役者生活だった。

 「小劇場の時はバイトをしながらだったけど、今は稽古場に仕事として来られる。その幸せ感は物凄い」

 12日から始まる舞台「黒塚家の娘」(東京・シアタートラム)の稽古の真っ最中。「グッディ!」が終わると都内のスタジオで午後9時ごろまで行い、土日も稽古だが、「帯番組をやっていると、舞台の出演が制限されてしまう。だからこそ、稽古場に行くと夢中になる。稽古をやってる時間が今は一番夢中です」

 30年以上に及ぶ俳優人生で、演じてきた人物は数知れないが、子育てを通じて人間の奥深さも再発見した。「子供って寄ってくる時もあれば、急に“来ないで”って言ったりする。人を理解するのって凄く大変なことなんだなと思いました。大人のことなんか余計分かりませんよ」。

 子供が生まれるまで趣味はサーフィンだった。海に癒やされに行く自己流で「自分にとってちょうどいい波は、膝くらいの高さ。波を待ってる間って何も考えないし、たまに船が見えたりして浄化される。あれはいいストレス解消だった。子供がもうちょっと大きくなったらまたやりたい」

 子育ては大変ではあるが、癒やしでもあり、やはり至福だ。「抱っこひもで寝かしつけてるとね、こっちも気持ちがいいんですよ。赤ちゃんて、くっついてると柔らかくて。特に女の子は柔らかい」。陽気なDNAもしっかり受け継がれ「息子は変な顔ばっかりする。僕に似てますね。楽しい人になってくれればいいです」。子供がいるから頑張れる。少し眠たそうな顔から愛情がこぼれていた。

 ≪盲目の牧師熱演≫「黒塚家の娘」は“安達ケ原の鬼婆伝説”を基にした能の「黒塚」がモチーフ。悩める若き牧師が霧深い森に迷い込み、謎めいた母娘の屋敷で一夜を過ごすファンタジーホラーだ。高橋は後を追ってやってくる盲目の先輩牧師役。若い牧師は風間俊介(33)、母娘を渡辺えり(62)と趣里(26)が演じる。「4人しかいないのに稽古場が濃いです。えりさんは、趣里ちゃんと自分を合わせて“しゅりえり”とか言ってました」と楽しそうな様子を明かした。公演は6月11日まで。

 ◆高橋 克実(たかはし・かつみ)1961年(昭36)4月1日、新潟県出身の56歳。87年に劇団「離風霊船」に入団し、98年に退団。ドラマ初出演は93年のNHK「トーキョー国盗り物語」。98年にフジテレビのドラマ「ショムニ」の人事部長役で人気になり、02年から同局のバラエティー「トリビアの泉」の司会を務めお茶の間に浸透。主な出演作はNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」など。6月3日公開の映画「花戦さ」にも出演。

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