豊洲市場移転延期に見た現場の発言力の弱さ

[ 2016年9月4日 08:15 ]

記者会見で築地市場の移転延期を表明する東京都の小池百合子知事

 東京都の小池百合子知事が11月7日に決まっていた豊洲市場への移転を延期した。移転日に納得していなかった築地市場の水産仲卸業者にとっては「年末年始の繁忙期だけは避けてほしい」と声を上げ続けた成果が実った形だ。

 当初の移転日決定は、現場の業者にとって寝耳に水だったという。移転日に不安を持つ仲卸業者が定期的に集まって開いてきた会合では「我々が11月7日に開場するということは都からの通達で初めて知った」「なぜ繁忙期なんだと担当者に聞いても“もう決まったこと”とか“東京五輪までに環状2号線の工事を間に合わせるため”と納得の行く答えが返ってこない」という声が噴出していた。「我々の仕事は都民の台所を守ること。五輪は関係ない」と熱く訴える業者もいた。

 一方、実際に移転に向けて準備を進めている業者も少なくなかった。40代の若い水産仲卸業者は「新しい市場の歴史を俺らが作るぞという気持ち。商品の品質から見ても、鮮度のいい商品をお客さんに買ってもらうことが我々にとって一番ですから」と語る。築地に慣れ親しんだベテランと市場の歴史を受け継ぐ若い世代との間で移転に対する考え方に相違があるのが実情だ。

 揺れる市場関係者たちの声を取材して改めて思ったのが、東京都と現場との関係性。都が営業許可を握っている以上、現場の発言力はどうしても弱くなってしまう。移転をめぐり現場が一枚岩になる機会を何度も逸してきた背景には「営業許可を取り消されるのが一番恐ろしくて、都に従うしかない」という心理も影響している。

 豊洲市場開業日の見直しにあたり、業者が安心して営業できる環境整備が最優先だが、現場がほんろうされる“悲劇”を繰り返さないためにも、都と対等に交渉できるカードを持つ必要もありそうだ。(記者コラム)

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