【内田雅也の追球】流れ呼んだ一塁・大山の好守 ピンチを辛抱できたからこその追加点だった

[ 2023年7月12日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神7-2DeNA ( 2023年7月11日    倉敷 )

<神・D>5回1死二、三塁、藤田の打球をさばく大山(撮影・北條 貴史)
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 阪神のリードがまだ1点だった5回表、無死一、三塁を無失点でしのげたのは、一塁手・大山悠輔の好守があったからである。あまり目立ちはしないが、確かに大山は同点を阻止していた。

 まず、投手・上茶谷大河の一塁前バントはチャージして、三塁走者を本塁突入させなかった。恐らく相手の作戦上は一塁走者を二塁に進める送りバントだったのだろうが、一塁手の動きが緩慢だったなら、三塁走者・京田陽太が同点の本塁に還っていただろう。

 1死二、三塁とかわり、代打・藤田一也のゴロは高く弾んで一塁前に飛んだ。この打球にも大山は素早く前進して捕球。相当に離塁していた京田を目で制し、一塁カバーの中野拓夢に送球。本塁突入をさせなかった。

 2死後、関根大気を三邪飛に切って、無得点でしのいだわけだ。
 野球の試合には流れがある。その裏、4長短打を集めて3点を追加できたのは、直前のピンチを辛抱できたからである。つまり、大山の貢献が大きかったわけだ。

 大山の高い一塁守備力は以前より定評があった。ただ、チーム事情により昨年までは三塁や外野を守ることも多かった。

 監督・岡田彰布は昨秋の就任時に大山の一塁固定を明言していた。もともと「バッテリー以外で一番ボールを触るのは一塁手。一塁の守備は軽視したらあかん」と一塁守備を重視していた。前回監督時代(2004―08年)も広島から加入のアンディ・シーツを遊撃手から一塁手に転向させた。新井貴浩(現広島監督)も三塁手ではなく一塁手として使った。今回も「大山の一塁守備はうまい。守備陣を安定させたかった」と語っていた。

 野球指南書の原点と言える『ドジャースの戦法』が日本で発行されたのは1957(昭和32)年。V9巨人の教科書と呼ばれた。<一塁手のはたらきは、ティームを勝利にみちびく上に重要なものである>とある。巨人黄金期の王貞治である。

 さらに<生まれつきの才能に加うるに、練習によって上達しようとする意欲、野球に対する熱意がそなわってはじめてすぐれた一塁手となることができる>。まるで、大山を指しているような書きっぷりである。

 思えば、3回裏に奪った2点の先取点も相手一塁手・佐野恵太の失策がからんでいた。一塁守備が明暗を分けた首位攻防戦だった。 =敬称略=(編集委員)

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