ダル エースの特権、専属捕手 “クセ者”正捕手を回避

[ 2013年1月13日 06:00 ]

通訳なしでインタビューに応じるレンジャーズ・ダルビッシュ(左)

 レンジャーズのダルビッシュ有投手(26)が11日(日本時間12日)、地元でのファン感謝イベントに出席。同席したロン・ワシントン監督(60)は、昨季途中から加入し、相性が良かった控えのジョバニー・ソト捕手(29)を専属捕手とする考えを明らかにした。メジャーではエース級だけに許される特権。信頼する女房役のサポートも受け、メジャー2年目の右腕は全米開幕戦となる3月31日(同4月1日)のアストロズ戦を目指す。

 久しぶりに公の場に姿を見せたダルビッシュ。地元記者選出による昨季のチーム最優秀新人の表彰を受けた右腕は、会見でオフの過ごし方を問われると「去年は準備する時間が限られていた。自分の時間を普通に使い、ケアをしっかりすれば大丈夫」。落ち着いた受け答えは、2年目への自信がみなぎっていた。

 昨季はメジャー1年目の適応に苦しみながらも、16勝9敗、防御率3・90と堂々の成績。さらなる飛躍が期待される右腕に対し、ワシントン監督は「エースになる資質はある。キャンプをどう過ごすか次第だ」と期待した上で「特権」を与えた。レ軍は今オフ、昨季ホワイトソックスで27本塁打を放った強打の捕手ピアジンスキーをFAで獲得したが、指揮官は「ソトはダルビッシュといい関係を築いている。彼が投げたいことをよく理解している」と、控えのソトを専属捕手として起用することを明言した。

 ダルビッシュは昨季、正捕手ナポリ(FAで移籍先未定)を筆頭に3人と組んだが、抜群の相性を誇ったのが7月31日にカブスから加入したソトだった。8試合で5勝1敗、防御率2・35。他の2人と組んだ時の通算防御率は4・57で、その差は歴然としていた。

 10種類近い球種を持つ右腕をリードするのは容易ではなく、呼吸が合わないとリズムも狂う。メジャーはプライドが高い捕手が多い中、「気持ち良く投げさせてくれ」とダルビッシュから注文を受けたプエルトリコ出身のソトは「配球よりもいかにリラックスさせるか」を心掛け、覚えた日本語で笑わせることも。ダルビッシュは日本ハム時代にも鶴岡と決まってコンビを組んだように、息のあった女房役の存在がより投球を引き立てる。

 ましてや、ピアジンスキーはこれまで何度も乱闘や仲間割れを起こし、昨年の米誌メンズ・ジャーナルの企画「選手が選ぶ最も嫌いな選手」で1位に選ばれたクセ者。意思疎通が懸念されていたが、その心配も消えた。

 WBC出場を辞退して臨む今季。ダルビッシュは目標を聞かれると「チームが優勝できるように、ということだけ」と言った。視線の先にあるのは、メジャー全体の開幕戦となる3月31日のアストロズ戦。真のエースになるためにもそのマウンドは譲れない。

 ▽メジャーの専属捕手 「Personal Catcher」と呼ばれる。有名なのは、90年代に黄金期を築いたブレーブスで、グレグ・マダックスとバッテリーを組んだエディ・ペレス。当時は強打の捕手ハビアー・ロペスがいたが、「精密機械」の異名を持った通算355勝右腕はリードに定評があるベテラン捕手を指名。97年は先発33試合中31試合、98年は34試合中32試合、99年は全33試合でマスクをかぶった。また、ナックルボーラーが専属捕手をつけるケースは多く、最近ではティム・ウェークフィールドがレッドソックス時代に主将のジェーソン・バリテックではなく、ダグ・ミラベリと組んでいた。

 ▽日本では? エースと控え捕手が常時バッテリーを組むのは珍しく、最も有名なのは、通算317勝の鈴木啓示と有田修三(近鉄)のコンビ。当時の西本幸雄監督が「有田の強気のリードの方が鈴木に合っている」との理由で、正捕手の梨田昌孝ではなく、有田を起用した。また、近鉄では野茂英雄が、山下和彦、古久保健二、光山英和の捕手3人制の中で、光山と組んだ。最近では斉藤和巳―的場直樹(ソフトバンク)、山本昌―小田幸平(中日)などの組み合わせがある。

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2013年1月13日のニュース