嶋 魂のヘッド!東北の底力見せた!勝った!

[ 2011年4月30日 06:00 ]

<楽・オ>4回1死、楽天の嶋がショートへの打球を放ち一塁にヘッドスライディング

パ・リーグ 楽天3-1オリックス

(4月29日 Kスタ宮城)
 勝利の後、楽天選手会長の嶋は満員のスタンドに向かって熱く、心のこもった言葉を伝えた。震災からこれまでを振り返り、最後にこう訴えた。

 「絶対に見せましょう、東北の底力を」

 前夜、日付が変わるまで考え抜いたスピーチ。2日の札幌ドームで行われた慈善試合では「見せましょう、野球の底力を」と訴えたが、本拠地開幕では「東北の底力を」に変わった。今なお苦しむ人々を励ましたかった。

 試合では全力プレーで勇気づけた。2回に岩村、ルイーズに続く3連打となる中前打で先制につなげた。4回の遊撃内野安打では一塁にヘッドスライディング。マスクをかぶっても田中を好リードし「気持ちだけは前面に出していこうと。負けたら楽しみにしていた人たちを裏切ることになる。勝ったことが僕の中では一番ホッとしました」と胸をなで下ろした。

 8日に東松島市を慰問した際、震災で中止になった幻の開幕カードのチケットを手にした母娘に出会った。その娘は嶋の大ファン。津波に襲われた時、チケットを持って逃げたという。嶋はその宝物にサインした。その模様がテレビで放送され、感動したロッテファンの厚意で母娘は12日のロッテとの開幕戦(QVCマリン)に招待された。嶋は球場に招き入れ再会し、その試合で決勝3ラン。後日、再び放送された母娘の喜ぶ姿を見た。「しみじみと見てました。本当に良かった」。プロ野球選手は勇気を与えられる。そのことをあらためて実感した。

 「(Kスタ宮城は)凄く温かく、やっと帰ってきたなと。これからも勝利を積み重ねることが大事だと思う」。本拠地でもらった声援を力に代え、嶋は戦い続ける。

 ◆嶋スピーチ全文

 本日は、このような状況の中、ここKスタ宮城に足を運んでくださり、またテレビ、ラジオを通じてご覧いただき、誠にありがとうございます。球場に来ることが簡単ではなかった方、またここに来たくても来られなかった方も大勢いらっしゃるかと思います。
 地震が起きた時、僕たちは兵庫県にいました。遠方の地で家族ともなかなか連絡が取れず、不安な気持ちを抱えながら全国各地を転戦していました。報道を通じて被害状況が明らかになっていくにつれて、僕たちの気持ちもどんどん暗くなっていきました。その時のことを考えると、きょう、ここKスタ宮城で試合を開催できたことが信じられません。
 震災後、選手みんなで「自分たちに何ができるか」、「自分たちは何をすべきか」を議論して、考え抜き、この東北の地に戻れる日を待ち続けました。
 そして開幕5日前、初めて選手みんなで仙台に戻ってきました。変わり果てたこの東北の地を目と心にしっかりと刻み、「遅くなって申し訳ない」と言う気持ちで避難所を訪問したところ、皆さんから「おかえりなさい」、「私たちも負けないから頑張って」と声を掛けていただき、涙を流しました。その時に何のために僕たちは闘うのか、ハッキリしました。
 この1カ月半で分かったことがあります。それは誰かのために戦える人間は強いということです。
 東北の皆さん、絶対に乗り越えましょうこの時を。絶対に勝ち抜きましょうこの時を。今この時を乗り越えた先には、もっと強い自分と未来が待っているはずです。絶対に見せましょう、東北の底力を。本日はありがとうございました。

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