三菱重工横浜“ラッキー”22年ぶり1勝

[ 2010年9月1日 06:00 ]

<都市対抗 三菱重工横浜・王子製紙>延長11回2死満塁、坂上(左)が失策を誘う遊ゴロを放ち、サヨナラ勝ちに松井と抱き合って大喜び

 第81回都市対抗野球大会第5日は8月31日、東京ドームで1回戦3試合が行われ、第2試合で三菱重工横浜(横浜市)が、今大会初となったタイブレーク方式の延長戦で、11回に敵失で決勝点を挙げ、王子製紙(春日井市)に3―2でサヨナラ勝ちした。主砲の渡部英紀外野手(34)が8回に放った同点2ランが、チーム22年ぶりの勝利を呼び込んだ。また、東芝(川崎市)、三菱重工名古屋(名古屋市)も2回戦に駒を進めた。

【試合結果


 社会人13年目のキャリアはダテじゃない。0―2の8回2死一塁。起死回生の同点弾を高々と左翼席に放り込んだのは、歯を食いしばって苦難の時期を乗り越えてきた34歳の渡部だった。
 「ストライクゾーンに来た球は何でも振るつもりでした。正直、クラブの時代はここで勝利を挙げるなんて考えられなかった。打てて良かった」
 渡部の社会人生活はチームの苦境と重なる。1998年に入社も、3年後の2001年には不況の影響もあり、本社が経費削減策の一環としてスポーツ支援態勢の見直しを行い、クラブチーム化した。部員は社業優先となり、全体練習は週に2回。実戦はほとんどできなくなった。「実戦がないので自分の状態さえも分からなかった」。廃部の危機がささやかれる中、仲間は次々にチームを去っていったが、渡部は踏みとどまった。「(移籍も)考えましたが、自分は神奈川で育ててもらった。ここでもまれたい」。地道な活動が会社に評価され08年夏から再び企業登録となり、かつての活気を取り戻した。
 個人としては都市対抗に11度目の出場となるが、そのうち9度は補強選手としてのもの。通算本塁打も6本目だが、自分のチームで打ったのは初めてだ。「きょうの1本が今までで一番価値がある。土壇場で(試合を)振り出しに戻せましたから」。延長タイブレークの末、王子製紙を振り切り88年以来、22年ぶりの勝利。最後は敵失でサヨナラ勝ちとなったが、勝利の形はどうでもよかった。
 今でも長距離砲として活躍できるのは、長男の敢大(かんた)くん(9)の存在が大きい。「夜、息子に素振りしようと言われると断れなくて。1時間ぐらい振ってます」。こんな心優しきパパが、晴れの舞台でどでかい仕事をやってのけた。

 ◆渡部 英紀(わたなべ・ひでのり)1975年(昭50)11月6日、神奈川県生まれの34歳。東海大相模―東海大を経て98年に三菱重工横浜入り。昨年は指名打者として初めて社会人ベストナインを受賞した。1メートル87、90キロ。右投げ右打ち。

 ▽タイブレーク 社会人野球では都市対抗を含む公式戦で2003年から適用している。当初は延長13回以降、かつ試合時間が4時間を超えた場合に適用されてきたが、試合のスピードアップ化を図る日本野球連盟が09年の都市対抗からは延長11回から導入。1死満塁から試合を行う。ただし、準決勝以降は適用しない。

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2010年9月1日のニュース