広澤克実氏 脈々「野村イズム」を令和の時代に進化させた高津監督

[ 2022年9月26日 06:15 ]

セ・リーグ   ヤクルト1-0DeNA ( 2022年9月25日    神宮 )

<ヤ・D>胴上げされるヤクルト・高津監督(撮影・郡司 修)
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 ヤクルト・高津監督に脈々と受け継がれる「野村イズム」――。球団では92、93年以来、実に29年ぶりとなるリーグ連覇。4番を打つなど前回連覇時の主力だった広澤克実氏(60=スポニチ本紙評論家)が、当時チームを率いた名将・野村克也監督と高津監督の共通点などを明かした。

 私も高津監督も野村監督の下で学ばせていただいた。高津監督の采配、手腕を見ていると、野村監督の考えを受け継いでいることがよく分かる。まず辛抱強さ。今季でいえば、3年目の長岡を遊撃で我慢強く使ってレギュラーに育てた。今やプロ野球界の顔となった村上が入団した18年は2軍監督。こちらも辛抱強く、かつ伸び伸びとプレーさせてここまで大きく成長させた。

 育てながら、勝つ。これは各球団における永遠の課題だが、当時の野村監督は育成にも非常に重きを置いていた。自前の選手を育てつつ「再生工場」で獲得した選手を生かすすべを見つける。高津監督も育成手腕にたけており、勝利との両立を成し遂げたという点では野村監督に匹敵すると思う。そんな選手を育てるために必要な、2人に共通するキーワードが「辛抱強さ」だ。

 そしてその裏には「覚悟」「度胸」も見え隠れする。野村監督は例えば無死二塁の場面で、走者を送らずに「後続の打者3人で1点」を目指す采配があった。「安打を打つ」と選手を信じる覚悟と度胸。これがないと辛抱強さも生まれないし、同様に高津監督の采配にも選手を信じての度胸を感じる。現役時代にクローザーをやっていたからだろうか、采配に芯の強さがある。

 私の現役時代の監督像といえば、指導者であり教育者だった。高校野球もそうだが、野村監督もそのイメージ。令和の今は、監督は大リーグでいうところの「マネジャー(管理者)」。高津監督は選手の健康などを管理し、最大限のパフォーマンスを発揮させるのが非常にうまい。野村監督のような「ボヤき」はないが、選手だけでなくチーム全体を同じ方向に向かせる操縦術。BCリーグなどでの指導経験も生きているのだろう。野村監督のスタイルを令和の時代に進化させたと言っていい。

 連覇を成し遂げたからには、ぜひ2年連続日本一を目指してほしい。セ・リーグでは79、80年の広島以来。私も92年は黄金時代の西武に日本シリーズで敗れた。球団初の快挙を期待している。

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2022年9月26日のニュース