第4Qの3P成功率は9・5% ジェームズを覆う“暗い影”を振り払う策はあるのか?

[ 2023年5月21日 14:21 ]

ゴール下でのレイアップに持ち込むレイカーズのジェームズ(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】レイカーズのレブロン・ジェームズ(38)は20日に行われた西地区決勝第3戦で23得点をマークし、第4Qの8分26秒にはこの日3本目の3点シュートを成功させた。実はこの3点シュートの成功はプレーオフ1回戦の第1戦(対グリズリーズ)以来、第4Qに限ると15試合ぶり。連続失敗記録に「18」でピリオドを打つ1本だった。

 ジェームズの3点シュートの成功率はレギュラーシーズンで32・1%。しかし今ポストシーズンでは24・2%にまで低下している。そして第4Qに限るとなんと9・5%(21本中2本)。第4Qに出場してシュートを放ったのは13試合だが、最も重大な局面となる最終クオーターのジェームズの平均得点は5・4得点にとどまっている。

 少し意地悪かもしれないが、こんな算数の問題をこしらえてみた。

 「もしジェームズが今ポストシーズンで放った3点シュートをすべて2点狙いに変えていたらどうなるか」

 3点シュートの試投数(99)に2点シュートの成功率(63・5%)をかけて推定の成功本数を割り出し、そこから3点シュートの得点と2点シュートの得点を入れ替えて試合数で割る計算式なのだが、答えは27・07。これは現実の23・47を3・60も上回ることになる。つまり彼は第4Qに限ると3点シュートではなく2点シュートを狙うべきなのだ。

 一方、第4Qだけでなく試合全体を対象にして八村塁(25)で同じ問題を解くと、12・33という今ポストシーズンの実際の平均得点が11・47に下がってしまう。だから八村はジェームズと違って3点シュートをより多く打たなくてはいけないプレーヤーなのだ。するとオフェンスの重大局面で“お膳立て”をしなければいけない対象はおのずと違ってくる。もし八村がここまでジェームズが放った分の3点シュートを打っていれば、試投数はあと63本多かったわけで、すると平均得点は12・33ではなく18・93だったことも付記しておこう。

 第1戦から第3戦まで、レイカーズは接戦を演じながら、第4Q終盤で引き離されるという同じパターンで敗れた。第4戦の選択肢は2つ。第4Qの3点シュート成功率が9・5%しかない大ベテランが持っている“経験値”という数字では表せない部分にすべてをかけるのか?それとも過去ではなく現在の数値を重視して戦い方をドラスティックに変えてみるのか?

 NBAのプレーオフで0勝3敗となったのは、1947年の第1回ファイナルでフィラデルフィア・ウォリアーズと対戦したシカゴ・スタッグスに始まって今年のレイカーズで通算150チーム目。3チームが3勝3敗まで巻き返したが、すべて第7戦で敗れた。つまり0勝3敗となったチームのシリーズ突破確率は0%。ならばもう失うものは何もない。だから私は後者の選択肢を取ってほしいと思う。「あきらめたらそこで試合終了ですよ」…ですよね、レイカーズのダービン・ハム監督?

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった20238年の東京マラソンは5時間35分で完走。

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