橋本新会長 トップの姿勢、安全確保、開催意義…難題の解決急務 離れた世論戻せるか

[ 2021年2月19日 07:30 ]

東京五輪・パラリンピック組織委員会 新会長に橋本聖子氏

東京五輪・パラリンピック組織委の理事会で新会長として承認され、一礼する橋本聖子氏。右は「候補者検討委員会」の御手洗委員長、左は遠藤利明副会長
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 【スポニチ本紙・藤山健二編集委員の目】森前会長の“女性蔑視発言”に端を発した一連の騒動は、16日目にしてようやく決着した。あからさまに政治が介入したとしか思えない新会長の選出過程には多々疑問が残るが、もうこれ以上無駄に時間を費やしている暇は全くない。五輪は本当に開催できるのか。国民の最大関心事に橋本会長がどう答えたのか、就任会見から分析した。

 上から目線の発言を繰り返して世論の五輪離れを引き起こした森前会長とは対照的に、就任会見で橋本新会長がアスリートへの激励やボランティア、聖火ランナーへの謝罪、スポンサーに対する謝意をまず口にしたのは良かった。だが、素晴らしかったのはそこまでで、最も重要な2つの質問に対する答えは、残念ながら失望せざるを得ないものだった。

 今、五輪を巡る最大の問題は(1)五輪を予定通りに開催するのか否か、予定通りに開催するのであれば(2)どうやって安心安全を確保するのか――だ。だからこそ「開催に反対する世論をどう思うか」という質問が出たのに、橋本会長は「明確に安心安全と思ってもらえるようなものを打ち出して、国や東京都の理解も求めながら全力で準備していきたい」と答えるだけで、森前会長と同じく何ら具体的な策は示せなかった。

 コロナ禍でも開催を強行するのであれば、不安を感じる国民に対し「五輪を開く意義」を明確に示す必要がある。東京大会の理念に直結する大事な質問にも、橋本会長は「アスリートが頑張っている姿がこれからの五輪のレガシーとなるように」「選手たちが誇りと思えるような大会に」と、かみ合わない答えを連発しただけだった。

 「アスリートファースト」はもちろん大切だ。だが、それは平時の話であって、そのために国民が感染拡大の危機にさらされるようなことは絶対にあってはならない。アスリート自身がそのことを一番自覚して苦悩している時に、新会長がこれからどんな「理念」を示してくれるのか。その内容次第では再び国民の五輪離れが加速する可能性も否定できない。 

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