松岡修造氏 大坂新時代の幕開け告げた一戦「決勝も負ける要素ない」

[ 2021年2月19日 05:30 ]

テニス 全豪オープン第11日 ( 2021年2月18日    オーストラリア・メルボルン・パーク )

S・ウィリアムズ(右)と健闘を称え合う大坂(AP)
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 一時代を築いたS・ウィリアムズにストレート勝ちし、2年ぶりの全豪Vに王手をかけた大坂。わずか1時間15分で難敵を退けた準決勝には、どんな意味があったのか?日本テニス協会強化副本部長の松岡修造氏(53)が解説した。

 憧れの存在であるセリーナを超えた大坂さんが“次は私が世界を引っ張っていきます”とプレーで伝えた試合に見えた。力の差はセリーナが一番感じたのではないか。第1サーブがバンバン決まっていれば6―1、6―1ぐらいでもおかしくなかった。初めて大坂さんの試合を見た時からパワー、サーブ、コートカバー力などセリーナとスタイルが似ていると感じていた。今後の大坂さんは全盛期のセリーナのようなテニス、存在を目指すことになるだろう。

 2人の間には相当な力の差があった。唯一、大坂さんが劣っていたのが経験で、序盤は憧れの選手に勝ちたい思いが強く、緊張していた。第1セットはダブルフォールトや、大きくアウトするショットなど1回戦からの安定感はどうしたんだ、というプレーだったが、第3ゲームのブレークポイントをしのいでからは別人になった。

 ラリーで大坂さんはウイナー(相手ラケットにボールが触れずに決まるショット)を一回も狙っていない。ウイナーを狙わずにウイナーを取れるのはテニス選手としての理想。リスクを負って強打しないのでミスが減り、スイングに力みがないので相手にコースも読まれづらい。無理に強打しなくても力のあるボールを打てることが大坂さんの強みだ。

 昨年と比べて最も進化が見られるのは第2サーブ。以前の大坂さんは第2サーブを叩かれて攻撃される場面が目立ったが、今大会は高く跳ねるキックサーブの精度が非常に高く、セリーナも嫌がっていた。男子でも通用するぐらいの第2サーブだと思う。

 第2セットのセリーナは大声を上げたりして観客を巻き込んで流れを変えようとしたが、大坂さんは動じなかった。決勝も自分のテニスに集中できれば負ける要素はない。心さえ乱れなければ今の大坂さんを止められる選手はいない。大坂さんの強さを改めて実感する一戦だったが、個人的にはセリーナと差がついたことに、どこか寂しい気持ちもあった。(日本テニス協会強化副本部長)

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