聖火リレー、26日スタート“消える”…五輪延期受け決断、聖火は日本にとどまる

[ 2020年3月25日 05:30 ]

展示された聖火(撮影・西海健太郎)
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 東京五輪の延期を受け、26日に福島・Jヴィレッジをスタートする予定だった聖火リレーも延期となった。延期日程が確定すれば、来年改めて行う方針。大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「基本的なフレームは維持され、現在のルートや走者が尊重される形でやっていく」と、全47都道府県を巡る現在のコースを踏襲し、既に決まっていた聖火ランナーも優先的に起用する方針を明かした。

 大会組織委員会の森喜朗会長は聖火について、「五輪がこの困難な時において、世界の希望の道しるべとなる願いを込めて」日本にとどまることでIOCと合意したと発表。安倍首相の提案で当面の間、聖火が福島県に配置されることも決まったが、「来年までずっと福島に置くかは分からない」と話した。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、組織委員会では最初に聖火リレーを実施する福島、栃木、群馬の3県について、混乱を避けるために事実上の観覧自粛呼び掛けや式典の無観客などの対策を決定。有名人ランナー目当てに沿道で「過度の密集」が生じた場合、走行中止や走行区間入れ替えなどの措置も予定していた。
さらに、スタートから1カ月程度をめどに、トーチを持ったランナーの走行を取りやめる新方針も定め、23日の時点でスポンサーなどに連絡。ランタンに入れた聖火を車で運び、リレーのルートにあたる各地を巡る「聖火ビジット」という苦肉のプランも計画していた。

 もっとも、とてもリレーとは呼べない形態に「それでは盛り上がらない。組織委も本音はやめたがっていた」と話す関係者も。森会長は「新たな日程を定め、多くの方々にも集まっていただいて、盛大なグランドスタートが迎えられるよう準備を進めたい」と希望を口にした。

 《ランナー落胆…全国自治体戸惑い》聖火リレーの中止が決まり、トーチを掲げる日を心待ちにしていたランナーからは落胆や失望の声が上がった。「残念だが、延期や中止は覚悟していた」と話すのは、岐阜県多治見市内で走る予定の農家・関谷英樹さん(40)。4月2日のリレーを目前に控えていた長野市の会社員小口彰夫さん(74)は「一生に一度の貴重な機会だから走りたかった」と話した。
 これまでルートやランナーの選定に奔走してきた各自治体の担当者も「急に言われても…」と、スタート2日前になって急きょ中止という衝撃的な決定に戸惑いを隠せない様子。大会組織委員会は再開する場合には既に決まっていたルート、走者を尊重する方針を示している。だが、既に県内の各ルートを走るランナーが発表されている岐阜県の担当者は、今後のランナーの扱いについて「どうなるか分からない。全て組織委の指示を受ける。全国共通だと思う」と話した。

 《当面福島に掲げる火、内堀知事「喜んで」》福島県の内堀雅雄知事(55)は県庁で緊急会見を行い、東京五輪の1年延期について「残念という一言になる」と唇をかんだ。また、森喜朗会長から直接電話で聖火を福島に置くことを打診され「喜んで受けさせていただきたい。個人の意見ではJヴィレッジに掲げたい」と希望も語った。東日本大震災の被災地を「復興の火」として巡回する聖火はこの日、JR福島駅東口前で展示され、約3000人が観覧した。

 ▽20年東京五輪の聖火リレー 東京五輪の聖火は宮城県の航空自衛隊松島基地に到着後、東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島で「復興の火」として展示。3月26日に福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」をスタートし、47都道府県を巡って7月24日の開会式で東京・国立競技場の聖火台に点火される予定だった。移動日を含めて121日、通過する市区町村は日本全体のほぼ半分の859、東日本大震災の被災地の他、広島県の宮島など世界遺産も組み込み、「復興五輪」の理念とともに地域の魅力を発信する計画だった。

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