文田、レスリング五輪1号! 23歳男泣き「やっと…長かった」

[ 2019年9月17日 05:30 ]

レスリング 世界選手権第3日 ( 2019年9月16日    カザフスタン・ヌルスルタン )

レスリング日本第1号五輪切符!!男子グレコローマン60キロ級準決勝に勝ち、五輪出場を決め吠える文田
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 東京五輪予選を兼ねて男子グレコローマンスタイルが行われ、60キロ級の文田健一郎(23=ミキハウス)が準決勝でアリレザ・ネジャチ(イラン)をテクニカルフォールで下し、銀メダル以上を確定させて今大会日本勢第1号となる初の五輪代表に内定した。77キロ級の屋比久翔平(24=ALSOK)と130キロ級の園田新(25=ALSOK)は初戦で敗退。97キロ級の敗者復活戦に臨んだ奈良勇太(23=警視庁)も敗れ、文田以外のグレコローマン五輪階級は出場枠の獲得を逃した。

 悲願の五輪切符を手にした23歳は遠くを見るような目に大粒の涙をため、声を震わせた。「まだスタート地点ですから。やっと…長かったですね」。12年ロンドン五輪は恩師で父の敏郎氏(58)が育てた韮崎工高の“兄弟子”米満達弘の金メダルを現地で観戦。16年リオ五輪は練習パートナーとして同行し、日体大の先輩の太田忍(25=ALSOK)が銀メダルを獲る姿を目の前で見た。一方で自身は昨年、ケガに苦しみ、今年の国際大会も結果を残せていなかった。

 「あの舞台に立てるのは特別な人なんだって。自分はそういう星の下に生まれていないのかなと思った時もあったけど…腐らないで良かった」

 17年の世界選手権で優勝してから、常に研究される立場になった。「そこからいかに点を取るか」に取り組み、今大会は代名詞でもある反り投げを警戒される中、得意のグラウンドでのローリングを温存して勝ち上がった。準決勝は互いの消極的姿勢により1―1とし、グラウンドで4回回して大量加点。“投げの文田”を封印する狙い通りの展開に「世界でもう一つ戦える技ができたのは自信になります」と笑った。

 これまで同じ階級で長く競り合ってきた太田の存在も大きい。国内の選考大会で文田に敗れた太田は15日に非五輪の63キロ級で優勝し、60キロ級の結果を待つ立場だった。これまで「負けろと思っている」と公言していたが、この日の朝に顔を合わせた時は「決勝行ったら応援してやるよ」と声を掛けられたという。文田は「もう心から応援してくれるんじゃないですか」と笑いつつ「あの人に食らいついていく中で世界でも戦えるようになった。あの人がいないと今の僕はいない」と感謝した。

 五輪内定は決めたが、その前に17日の決勝が残っている。「一番高い表彰台から見る景色をもう一度見たい」。東京五輪への第一歩は、2年ぶりの世界制覇から始まる。

 《レスリング東京五輪への道》五輪実施階級で世界選手権5位以内の国と地域に出場枠が与えられ、メダルを獲得した選手は東京五輪代表に内定。5位の選手は今年12月の全日本選手権で優勝すれば代表が決まる。他の選手が優勝した場合はプレーオフを実施。今大会で五輪出場枠を逃した階級は、全日本選手権覇者を来年のアジア予選、世界予選に派遣して出場枠獲得を目指す。

 ◆文田健一郎(ふみた・けんいちろう)
 ☆生まれとサイズ 山梨県韮崎市出身。1メートル68。韮崎工―日体大卒。
 ☆レスリング歴 韮崎工高監督の父・敏郎氏の影響で中1から本格的に始める。小学生の高学年時代は女子選手と手を合わせる程度で、父いわく「女の子に強くしてもらったやつ」。
 ☆タイトル 59キロ級で16年全日本選手権を初制覇し、17年のアジア選手権と世界選手権で金メダル。60キロ級で昨年の全日本選手権、今年6月の全日本選抜選手権で頂点に立ち、今回の世界選手権代表の座をつかむ。
 ☆得意技 組んだ相手を後方に投げる「反り投げ」。
 ☆にゃんこレスラー 猫好きで趣味は猫カフェ通い。

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