神鋼18季ぶり日本一、一丸で圧倒 平尾さんにささげた

[ 2018年12月16日 05:30 ]

ラグビートップリーグ決勝トーナメント兼日本選手権決勝   神戸製鋼55―5サントリー ( 2018年12月15日    秩父宮 )

<神戸製鋼・サントリー>平尾誠二さんの遺影を持ち秩父宮賜杯を掲げる前川を中心に喜ぶ神戸製鋼の選手たち(撮影・篠原岳夫)
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 神戸製鋼が55―5で2連覇中のサントリーに圧勝し、トップリーグ初年度の2003年以来、15季ぶりに優勝した。日本選手権は00年以来18季ぶりV。50点差は、トップリーグと日本選手権の決勝の最大得点差(社会人対決のみ)。チームの歴史を知る“レガシー活動”に取り組んだことで、戦力を持ちながら勝てなかったチームが一丸になった。16年10月に胆管細胞がんで他界した平尾誠二ゼネラルマネジャー(享年53)の遺影が、表彰式の壇上でメンバーによって掲げられた。

 合言葉1つでチームは変わるものだ。15季ぶり優勝を決めた神戸製鋼のメンバーが、肩を組んで円になった。「スティーラーズ」と、秩父宮に大声を響かせた。鉄鋼会社で働く男を指すこのチーム愛称のもと、鉄の結束でつながり、日本一をつかみとった。

 「サントリーどうこうでなく、自分たちのラグビーができたことで、あの点差になったのだと思います」

 前主将のフランカー橋本大は50点差の大勝を振り返った。FWとバックスが一体の波状攻撃の連続。15―5の前半37分はフッカー有田が、敵陣22メートル付近で体重104キロと思えぬ素早さでチャージを決めてそのままトライ。風上の後半は、2連覇中の王者にトライすら許さなかった。ヒーローを探すのが難しいほど、メンバー一丸で攻め続けた。

 毎年期待されながら14年間無冠の名門が変わった。その要因を、橋本大は「目先の結果を追い求めたのではなく、チームの歴史を求めることに重点を置いたからだと思う」と説明する。世界的名将のスミス総監督が今季就任。1928年創部のラグビー部や、会社を知ることからシーズンが始まった。

 製鉄所を訪れ、従業員や船のエンジンの基幹部分となる製品に触れた。スター選手のSOカーターも防護コートを着て工場内を歩いた。一見、青臭く映る“レガシー活動”の狙いは「誰のためにラグビーをするか」を確認するため。プロが大半になり、外国人選手の数も増えた今、「会社のためという一本のシンが通った」と効果は絶大だった。

 スミス氏は1年で15週間のみの滞在だった。現場を預かった元教師のディロンヘッドコーチが首脳陣、選手を束ねた。決勝トーナメントが始める前、製鉄所で働く社員の作業服をグランドにかけさせた。V7戦士のフッカー弘津英司さんのものだった。「きついことから逃げない。率先してきついことをする人」という「スティールワーカー」の意味をかみしめ、メンバーは最後まで戦い続けた。

 一丸の精神は、如実に表れた。決勝で2トライのFB山中は、故障で準決勝をスタンドから見守っていた。勝利後、ベテランWTB大橋らが涙を流す姿を見て、心が震えた。

 「メンバー外は複雑な気持ちの人が多いもの。泣いている人を見て、本当にチームが変わったと思った」

 88年度のV1は、年が明けた89年1月10日、つまり平成元年になって優勝したものだった。欠けていた結束力でつかんだ今回の頂点で、平成最後の日本一になった。「新しい歴史をつくるために戦ってきた。あとは後輩につなげられたら」と橋本大。元号が変わっても、赤いジャージーは栄光を追い求める。

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