【萩本光威氏 特別寄稿】神鋼V7時代に目指した「楽しく、見ている人が面白い」を見事再現

[ 2018年12月16日 08:46 ]

ラグビートップリーグ決勝トーナメント兼日本選手権決勝   神戸製鋼55―5サントリー ( 2018年12月15日    秩父宮 )

<神戸製鋼・サントリー>平尾誠二さんの遺影を持ち秩父宮賜杯を掲げる前川を中心に喜ぶ神戸製鋼の選手たち(撮影・篠原岳夫)
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 神戸製鋼のV1からV3を選手として支え、ヘッドコーチとしても99、00年の日本選手権連覇、03年の初代トップリーグ王者に導いた元日本代表監督の萩本光威氏(59)がスポニチ本紙に特別寄稿した。OBの思いも背負った全員ラグビーに新生スティーラーズを見た。

 日本一おめでとう。本当にうれしい。FW、バックス関係なく全員が攻守に連動できていた。開幕当初は声を出してのコミュニケーションが図れていなかったが、シーズンが深まるにつれミスが出ても試合中に話し合い修正できるようになっていた。

 前半3分、WTBアンダーソンが先制トライした時は、サントリーがブレークダウンに対してまったくプレッシャーをかけられていなかった。これはボールの動きに対し全員が反応し、次の展開を予想し素早くサポートできていたからだ。後半6分のCTBアシュリークーパーのトライもそう。サントリーFB松島に好タックルしてのターンオーバーから、自身がブラインドサイドからオープン攻撃に参加した。このシーンはまさに連動から生まれたもの。ダン・カーターばかりが注目されているが、この日本一は全員の“サボらない”意識が生んだ勝利だ。

 ウェイン・スミスがチームに来て意識改革をしてくれた。私にも「チームの歴史を教えて欲しい」と聞きに来た。V7時代のわれわれも先輩たちをリスペクトしていた。強い、弱いではなく先輩たちが築いてくれたものがあるから今の自分たちがある。会社、社員たちのバックアップに感謝した。誰のためにラグビーをするのか。もちろん自分のためだが、支えてくれている人のためでもある。それは自然にプレーにも現れる。私たちOBがしっかり教育できなかったことを、スミスは今のチームに気づかせてくれた。そこにカーターが加わり、謙虚で献身的なプレーをしてくれたことで、アシュリークーパーらのプレーも生きた。全員がラグビーに真摯(しんし)に向き合った結果だ。

 まるで強かった時のスティーラーズと重なって見えた。当時、目指していたものは「自分たちは楽しく、見ている人が面白いラグビー」。この日の試合はターンオーバーすればゲームを切るのではなくつなぐ意識が高かった。“ここはトライが欲しい”という場面では全員で一気に攻め込んでいた。目指していたものが100%できたように見えた。この勝利を出発点に新たなスティーラーズの歴史を積み上げてほしい。

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