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ピッチに救急車 広島GK増田、デビュー戦の悲劇

[ 2013年5月7日 06:00 ]

<大宮・広島>広島GK増田が体を固定され担架に乗せられる

J1第10節 広島1―2大宮

(5月6日 NACK)
 大宮―広島戦(NACK)の後半39分、セーブしようとした広島のGK増田卓也(23)と大宮のFW富山貴光(22)がともに顔面から激突。富山は担架でピッチ外に運ばれたが、増田は一時記憶喪失となり首の損傷も懸念されたため、ピッチに救急車が入る異例の事態となった。2人はさいたま市内の病院に搬送され、検査の結果、ともに脳振とうと診断された。試合は22分間の中断の後に再開され、激突時に富山が挙げた決勝点で大宮が2―1で勝利。クラブ記録を更新する7連勝とし、J1不敗記録も21試合に更新した。

 スタジアムが騒然となった。鳴り響くサイレンに続き、緑の芝に救急車が進入した。非常事態を招いたのは後半39分。大宮の富山が、相手のバックパスに反応して突進。飛び出したGK増田より一瞬早く頭でボールに触った。その直後、互いに顔面から激突。両者とも頭部をしたたかに地面に打ちつけ、しばらく起き上がれなかった。

 場内がどよめく中、数分後に富山は担架で運び出されたが、側頭部から倒れた増田は意識を取り戻しても医療スタッフの判断でピッチに横たわったまま。広島の森保監督は「生命に関わるかもしれないんだぞ!」と主審に救急車をピッチに入れるよう要求。主催者である大宮の鈴木社長が了承した。負傷者を勇気づけようと、大宮の応援席からも増田コールが起こった。

 主審とマッチコミッショナー、両クラブの実行委員が話し合って試合を再開。ロスタイムを含め約10分を戦い、最後は雷雨の中で大宮が逃げ切った。だが、重要なのは結果ではない。森保監督は「早く人と道具がそろった救急車を呼んでほしかった」と振り返った。

 関係者は「(激突で)首を持っていかれたから動かせなかった」と負傷直後の状況を説明。一時は記憶喪失で自身の職業さえ分からなかったという。さいたま市内の病院に搬送後はCTスキャンで検査を受け、脳振とうと診断された。そのまま入院となり、7日の再検査で異常がなければ広島に戻ることになった。

 プロ2年目の増田はこの日がJ1デビュー。GK西川の負傷で先発し、後半32分にはMF青木のシュートをはじくなど奮闘した。試合後は広島イレブンが大宮ファンにあいさつ。佐藤は「紳士的に対応してくれた。感謝の気持ちを伝えたかった」と訴えた。増田の、そして富山の早い復帰が待たれる。

 ◆増田 卓也(ますだ・たくや)1989年(平元)6月29日、広島県出身の23歳。広島皆実高から流通経大を経て12年に広島入り。同年6月6日のナビスコ杯仙台戦でプロデビューを飾るなど、1年目は公式戦4試合に出場。今月4日にプロA契約締結が発表された。U―20、21~23日本代表。1メートル84、84キロ。利き足は右。

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