浦沢直樹氏 「漫勉」は「刺激だらけ」

[ 2022年2月24日 07:45 ]

NHK・Eテレ「漫勉neo」でプレゼンターを務める浦沢直樹氏
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】漫画家たちの創作の秘密に迫るNHK・Eテレのドキュメンタリー番組「漫勉neo」でプレゼンターを務める漫画家・浦沢直樹氏(62)がオンラインで取材に応じ、番組の魅力を語った。

 番組が始まったのは約8年前。2014年11月にパイロット版が放送された後、15年9月にシーズン1(計4回)が放送された。

 浦沢氏は発端について「5歳からずっと漫画を描いていて、日ごと夜ごと、漫画が完成されていくところを見てきた。人には出来上がった漫画を見せるが、自分の中では描いている時の面白さを感じていた。描き手がいつも体感しているものを、読み手は感じることができない。そのジレンマをずっと抱えていた。漫画家が描いているところを見てもらうことで、読者との溝が埋まるのではないか…。その思いが、徐々にこの番組の形になっていった」と明かす。

 2014年からの「漫勉」に18人、20年からの「漫勉neo」に11人と、これまで計29人の漫画家が番組に登場した。

 「それぞれ漫画の描き方が違った。『1人1ジャンル』なので、撮れば撮るほどジャンルが広がり、ネタは尽きない。僕が注目してきたのはペンスピードで、早い人は、このスピードだからあの躍動感が生まれるのだろうと思うし、少しずつ進める人は、このスピードだからあの繊細さが出るのだろうと思う。ペンスピードが作品全体のムードをつかさどっているというイメージがある」

 自身はこれまで「YAWARA!」「MONSTER」「20世紀少年」「あさドラ!」など多くのヒット作を生み出してきたが、この番組から影響を受けることもある。

 「刺激だらけ。番組を始めてから、相当に描き方が変わったと思う。ちばてつや先生がキッチンペーパーみたいなものを使っていたが、それは気づかなかったことで、使ってみると、とても良い。西炯子さんや少女漫画系の人たちは『瞳が命』みたいな感じで描いているので、瞳を大事にしないといけないと思い、目を描くのが丁寧になった。漫画は1人の世界で、描いている時、僕1人だけが大変な思いをしていると感じたりもするが、多くの漫画家に会って、みんな大変なんだ、みんな追求しているんだと分かり、励みになる」

 21年度後期のラインアップとして3回の放送(水曜後10・00)が決定。3月2日に「弱虫ペダル」の渡辺航氏、9日に「ケルン市警オド」の青池保子さん、16日に「パンゲアね」(読み切り作品)の新井英樹氏が登場する。

 「何げなく読んでいた作品を、この番組のために正面切って読むことで、とんでもなく深い作品だと分かる。その創作現場に入ることで、その作品の相当深いところまで見つめることができる。いつも、みんな凄いなあ!と思う」

 普段は担当編集者でさえ立ち入ることができない漫画家の仕事場。このドキュメンタリーを見るたびに、漫画をじっくり楽しみたいという思いが募る。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2022年2月24日のニュース