藤井七段、タイトル戦初の和服で完勝 師匠・杉本八段からのプレゼント「仙台平」

[ 2020年6月29日 05:30 ]

第91期棋聖戦5番勝負第2局 ( 2020年6月28日    東京・将棋会館 )

和服姿で対局に臨む藤井七段(日本将棋連盟提供)
Photo By 提供写真

 和服姿で対局に臨んだ藤井。8日の第1局では、4日の挑戦者決定戦からわずか中3日というスケジュールだったため、不慣れな和服ではなくスーツを着用。この日の第2局を前に着付けしての対局準備もして、タイトル戦では初めて、慣例となっている和服姿での登場となった。

 濃紺の和服に黒い羽織、袴(はかま)は灰色でしま模様の仙台平(せんだいひら)という組み合わせ。昨年5月に師匠の杉本昌隆八段(51)からプレゼントされたもので、呉服店関係者は「高いものだと100万円を超える」と明かす。杉本と藤井の母・裕子さんが京都市内の呉服店で選んだという。プレゼントした師匠の杉本は「必ず着る機会が来ると思っていた。実現してくれて感無量です」と話した。

 特に目を引いたのが、灰色にしま模様の仙台平の袴だ。仙台平は、仙台市で作られる高級絹織物の地域ブランド。工房の4代目当主で人間国宝の甲田綏郎氏(91)が手がけた袴は、フィギュアスケート男子の羽生結弦(25)が、18年7月2日に国民栄誉賞を授与された際に着た“勝負服”としても知られている。

 森下卓九段は「和服に着替えると気持ちが引き締まり、タイトル戦に出ている実感が湧いてくる」とメンタル面でのプラス効果を口にする。一方で、トイレの時間が長くなる、袖が駒に触れてしまう、袴の裾が引っかかって転ぶ、着崩れる――などのデメリットも。森下は「和服がしっくりいくまでに多少は時間がかかる。私は15回ほどかかった」と振り返りつつ、藤井には「紺絣(こんがすり)は初々しい。和服を気にせず盤面に没頭してほしい」とエールを送った。

 《りりしく若々しい 和服のプロも絶賛》愛知県岡崎市・大賀屋呉服店の植田浩一郎店主は、藤井の和服姿について「シンプルでオーソドックスな組み合わせ。りりしく若々しい雰囲気が漂う。誰がコーディネートしたのか知りたいくらい、良い組み合わせ」と絶賛した。藤井の将棋スタイルにも通じるといい「高校生なのに、老練な将棋をする彼の雰囲気に合っている」と指摘。今後について「藤井さんも和服をたくさん買いそろえていくだろう。一流棋士は和服の着こなしも一流で、おしゃれで現代的に着こなす。藤井さんの着こなしにも注目したい」と話した。

 《初和服は小学2年》藤井が将棋の対局で最初に和服を着たのは小学2年時の2010年。小学生大会の東海大会低学年の部で決勝に進出し、主催者が用意した紋付き袴を着て壇上で対局した。だが、まさかのミスを犯し準優勝となり、表彰式では悔しさのあまり人目をはばからず大泣きした。翌11年も決勝に進出し、前年の雪辱を果たして優勝。表彰式で賞状を手渡したのが、翌年の奨励会入会時から師匠となる杉本だった。

 ▽仙台平(せんだいひら)江戸時代の17世紀後半から18世紀初頭にかけて、4代伊達藩主・伊達綱村が京都から織匠を招いて、袴・法被などを織らせたのが始まりとされる。灰色にしま模様のものが多い。皇室、幕府、他藩への贈り物として極めて珍重された。

続きを表示

この記事のフォト

2020年6月29日のニュース