藤井七段“歩越し金”で完勝、同期の“キラー”大橋六段も驚きの型破り戦法

[ 2020年6月29日 05:30 ]

第91期棋聖戦5番勝負第2局 ( 2020年6月28日    東京・将棋会館 )

16年、奨励会三段リーグ戦を突破し四段昇段を決めた藤井(左)と大橋
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 棋聖戦第2局を2016年10月、藤井聡太七段(17)と同時に四段昇段した唯一の同期・大橋貴洸六段(27)が解説した。大橋は過去5戦して藤井に3勝2敗。藤井に3勝以上した棋士は4勝0敗の豊島将之名人・竜王(30)と3勝2敗の久保利明九段(44)のみで、大橋以外はタイトル経験者。初対戦から2連敗後3連勝の藤井キラーは「初心者にはお勧めできない手」とした“歩越し金”を勝敗の分かれ目として取り上げた。

 戦型は矢倉になりました。第1局、得意戦法の矢倉で敗れた渡辺棋聖が先手番で勝ちを返してシリーズの流れを取り戻しにいったのだと思います。両者準備万端だったことは時間消費から分かります。特に藤井七段は序盤から惜しみなく時間を使うタイプ。考えたことのない局面ではそうですが、この日は中盤まで渡辺棋聖より指し手が早かった。

 印象に残ったのは藤井七段の“歩越し金”です。攻め駒の銀を活用する歩越し銀は戦法としてありますが、矢倉戦で従来守備駒のはずの金を攻めに使う柔軟な発想に驚きました。

 自陣の3段目、歩の上に金銀3枚が横並びですから。定跡書に載ってないし、初心者にもお勧めできません。

 終盤、渡辺棋聖も粘りました。決め手を与えない指し回しでしたが、藤井七段の寄せが素早かった。渡辺陣に拠点があったわけでもないのに完勝でしょう。

 渡辺棋聖は兄弟子です。同じ所司和晴七段門下で私が奨励会時代も気を使ってもらった優しい先輩です。3冠を保持して充実されている。藤井七段がどこまで通用するのか興味がありました。

 藤井七段は以前から読みの量が多い印象です。四段になりたての頃はそこまででもなかったけれど(大橋が勝った)10日の王座戦2次予選は序盤から突き詰めて考えていた。藤井さんがダブルタイトル戦を戦われていることは励みになります。勝ち越している?なぜ勝てたのかな。この強すぎる将棋を見ているとそう思います。少しでも早く同じ舞台に立てるよう頑張りたいと思います。

 ◆大橋 貴洸(おおはし・たかひろ)1992年(平4)9月22日生まれ、和歌山県新宮市出身の27歳。所司和晴七段門下。16年10月、24歳でプロデビュー、19年10月に六段昇段。一般棋戦優勝2回。鮮やかなブルー、黄色などのカラフルスーツが“勝負服”。

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