玉置玲央に新人賞 学んだ“俳優の理想形”、大杉漣さんに「恩送り」

[ 2019年1月23日 05:30 ]

2018年毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞

笑顔を見せる毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞の玉置玲央(撮影・白鳥 佳樹)
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 2018年毎日映画コンクール(第73回)の各賞が22日、決定した。きらりと光った新星に贈られるスポニチグランプリ新人賞には「教誨師(きょうかいし)」の玉置玲央(33)と「菊とギロチン」の木竜麻生(24)が選ばれた。

 「感謝の気持ちがじわじわと膨らんできています。自分がどうとかではなく、皆さんのおかげで頂けた賞だという実感が湧いてきました」

 玉置は少しはにかんだ表情で受賞の喜びをかみしめた。感謝の気持ちはもちろん、「教誨師」に携わったすべての人に向けられたもの。中でも主演でプロデューサーも兼ねた大杉漣さんとの出会いは、俳優人生に大きな影響をもたらした。

 大杉さんが演じる、受刑者が改心するように導く教誨師の佐伯と対じする死刑囚6人の中の1人、高宮役。大量殺人を犯しながらも言葉巧みに佐伯を翻ろうする重要な役割を担ったが、初顔合わせの印象は「硬い、冷たい、強い」だった。

 「存在のデカさが怖かったんですよ。威圧するわけでも、強く言ってくるわけでもないのに。僕は年上の俳優さんにも物おじしないタイプなんですけれど、気軽に声をかけられませんでした」

 もちろんそれは杞憂(きゆう)に終わり、穏やかな人柄、役者としての立ち居振る舞いに触れて一気に心酔していく。撮影では反目する設定ながらも心でつながる距離感をつかみ「最高でした」と笑顔をはじけさせる。

 「僕はお芝居に対して真摯(しんし)でいたいし大好きだけれど、努めて頑張らなきゃと思っていた節があったんです。でも、漣さんが大正解をどんと出してくれたことで取っ払えました。ただ生きている延長にお芝居があるだけ。僕が将来こういう俳優になりたいという理想形でした」

 撮影終了後には肺炎になるほど心身を注ぎ込んだ。大杉さんは昨年2月に急逝し、再びの共演はかなわなくなったが「漣さんから頂いたものを、次の世代に送っていけばいいと今から思っています。返すことはできないので、“恩送り”ですよね。漣さんにもそれを求められていると思っています」と前を向く。

 「教誨師」は映画館で7回は見ているという。その度に大杉さんと過ごしたかけがえのない時間に思いをはせ、心の中で感謝を告げる。「自分の技術やキャリアとしてもそうですし、映画の世界に身を置いて漣さんのように現場を豊かにしていく存在になれるよう、どんどんと取り組んでいきたいです」と決意をにじませた。

 ◆玉置 玲央(たまおき・れお)1985年(昭60)3月22日生まれ、東京都出身の33歳。2005年、劇団「柿喰(く)う客」に参加し、以降ほぼ全ての公演に出演。主宰する演劇ユニット「カスガイ」では演出も手掛ける。「教誨師」が映画初出演。

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