にぎやかな正月映画にくたびれてきたら、この映画がお薦め!

[ 2019年1月23日 08:00 ]

「誰がための日々」で父子を演じたショーン・ユー(左) とエリック・ツァン (C) Mad World  limited.
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】香港映画「誰がための日々」が映し出す“今”に激しく心が揺さぶられた。身につまされもした。

 香港に住んだことがないから断言は出来ないが、市井の人々の暮らしが、おそらく誇張なく描かれている。日本でも案外普通に見られそうな家族の物語だ。ひどい火傷(やけど)を負った母親の介護をするために会社を辞めたトン。弟はアメリカに行ったきりで、トラックの運転で稼ぐ父親ホイも家に寄りつかない。いつしか介護うつになっていたトンは、予期せぬ事故で母親を死なせてしまい強制入院させられる。物語が幕を開けるのはトンが退院するところからだ。

 医師から「家族の支えが必要」と言われたホイは借りているアパートの狭い一室に息子を迎えて共同生活を始める。世間の目は冷たく、心の病への偏見や誤解が2人を苦しめるが、真正面から向き合ううちに、わだかまりを抱えていた父子は次第に心を通わせていく。希望の光が一筋差すラストに救われる思いがした。

 撮影当時20代だったという新人監督ウォン・ジョンの長編第1作。いきなり力量を存分に発輝し、香港や台湾の映画賞で数多くの各賞を受賞。17年3月開催の第12回大阪アジアン映画祭でも見事にグランプリを獲得した。

 俳優たちが見事だ。トンを演じたショーン・ユー(37)、父親のホイに扮したエリック・ツァン(65)は日本でもヒットした「インファナル・アフェア」(02年)での共演も記憶に新しい。母親役のエレイン・ジン(64)の存在感は圧巻。トンの婚約者を演じたシャーメイン・フォン(38)は音楽の世界でも活躍しているそうだが、女優としての力量も十分だ。

 高齢化社会が急速に進む日本でも介護の問題は深刻さを増している。昨年夏に総務省が公表した就業構造に関する調査によると「介護・看護のため」に離職した人が過去1年間で約10万人にのぼる。厚生労働省の調査では「老老介護」も増加の一途。この映画が映す世界は決して対岸の火事ではない。

 作品はスノーフレイクの配給で、2月2日の東京・新宿K,sシネマから随時全国公開されていく予定。映画は時代を映す鏡とも言われる。にぎやかな正月映画にくたびれてきたら、じっくりと腰を落ち着けて、こんな映画が見たくなる。重くてせつないが見逃したくない1本だ。

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