健大高崎・箱山主将 九死に一生から球史にあと1勝 昨年乗船中に虫垂炎&転落危機乗り越え3安打

[ 2024年3月31日 05:00 ]

第96回選抜高校野球大会第10日準決勝   高崎健康福祉大高崎5―4星稜 ( 2024年3月30日    甲子園 )

<星稜・高崎健康福祉大高崎>7回、高崎健康福祉大高崎・箱山は左前適時打を放つ(撮影・北條 貴史)
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 準決勝2試合が行われ、高崎健康福祉大高崎(群馬)は、星稜(石川)を5―4で下し、春夏通じて初めての決勝進出。今秋のドラフト候補で主将も務める4番の箱山遥人捕手(3年)が、逆転した7回に左前適時打を放つなど3安打1打点に好リードで躍動した。選抜通算40勝、春夏通算110勝となった群馬県勢の決勝進出は、55年桐生以来69年ぶり。報徳学園(兵庫)は中央学院(千葉)を4―2で破り、2年連続の決勝で02年以来22年ぶり3度目の春の頂点を目指す。

 九死に一生を得た主将が、鋼の精神力を発揮した。1点を勝ち越した7回、なおも2死二塁。箱山が3安打目となる三遊間を破る貴重な適時打を放ち、初めての決勝進出を引き寄せた。

 「プレッシャーは全然ない。逆境をどれだけ楽しめるか。白熱した戦いができたので、ビハインドの時も楽しかった」

 今秋ドラフト候補で、大会No.1捕手。守りでも2投手を好リードし、群馬県勢69年ぶりの決勝に導いた。2―3から4長短打で逆転した7回の攻撃前は「攻めていけ。この1イニングでやりきれ」とナインを鼓舞。11安打での逆転勝利に「打力を加えた“攻撃的機動破壊”。打って走る野球が今年完成しつつある」と胸を張った。

 大事件をきっかけに、揺るがない精神力を手に入れた。昨夏、新チームの主将に就任。「自分がチームをつくる」と強く思う一方、練習試合で敗戦が続いた。責任感から積もっていく重圧とストレス。8月の北海道遠征の時に限界が来た。仙台港から苫小牧行きフェリーに乗船後、次第にひどくなる腹痛。急性虫垂炎だった。出港から3時間ほど過ぎ、痛みは限界。荒波の沖合で、箱山を救うため海上保安庁の船艇が緊急出動した。横付けされた船に、はしごで乗り移る際、大波で転落しそうになった。暗闇の中、必死にはしごにしがみついた。あまりの恐怖に「痛みが消えていた。死ぬかと思った。それ以来(大舞台でも)何も感じなくなった」と振り返った。

 2回戦までは1安打も、28日の山梨学院との準々決勝から2試合連続3安打で打率・467。重圧のかかる試合になるほど力を発揮する。昨春2回戦で敗れた報徳学園との決戦で、目指すのは群馬県勢初の選抜制覇。「ずっと甲子園の頂点を目指してきた。最高の景色を全員で見たい。勝って泣いて終わりたい」。箱山が仲間とともに「球史に刻む1勝」をつかむ。(柳内 遼平)

 ◇箱山 遥人(はこやま・はると)2006年(平18)4月26日生まれ、東京都足立区出身の17歳。本木小1からジュニアヤンガースで野球を始める。足立区立第九中時代は江戸川中央シニアに所属。高校では1年秋からベンチ入りし、昨春の選抜で甲子園初出場。50メートル走6秒5、遠投100メートル。憧れの選手はソフトバンク・甲斐。1メートル76、83キロ。右投げ右打ち。

 ≪群馬県勢 69年ぶり3度目の決勝≫高崎健康福祉大高崎が春夏通じて初の決勝進出。群馬県勢の選抜決勝進出は36年の桐生中、55年の桐生に次いで69年ぶり3度目で、優勝すれば初めて。夏は99年に桐生第一、13年に前橋育英が優勝している。

 報徳学園は歴代単独7位の選抜通算40勝目、兵庫勢としては春夏通算180勝目の勝利で、22年ぶり3度目の選抜優勝に王手。過去2度の優勝は74年(昭49)、02年(平14)で、優勝なら昭和、平成、令和にわたる史上初の「選抜3元号制覇」。ちなみに春夏を問わない「甲子園3元号制覇」は、大正、昭和、平成の松山商(愛媛)、昭和、平成、令和の東海大相模(神奈川)が達成。

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