ハマのエース今永の哲学的向上心 進化のための「遅さ」に記者も驚がく!

[ 2023年4月17日 07:30 ]

イースタン・リーグ西武戦に先発したDeNA・今永
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 WBC決勝の米国戦に先発したDeNA・今永昇太投手が、14日にイースタン・リーグ西武戦(横須賀)で先発。6回3安打1失点、毎回の10奪三振、無四球にまとめた。

 記者はその投球をバックネット裏席で見届けた。担当3年目。21年から左腕の投球は見ている。だから今季1軍初昇格に向けた最終調整に対しても、スコアブックは冷静に記した。

 だが今永の全98球をチェックしていると、数球で違和感を感じる瞬間があった。「この球種は何だろう」と。6回1死でドラフト1位・蛭間の1、2球目に投じた球種だ。

 <1球目>143キロで、ストライクゾーンの真ん中付近にスッと沈んだ。空振り。

 <2球目>140キロで左打者の蛭間の膝もとに同じ感じで沈んだ。ボール。

 カーブ、スライダー、チェンジアップ、カットボールなど豊富な球種を操るが、この腕の振りでこの球速、そしてこの球筋を見たことがなかった。だがら、登板後に本人に聞いた。

 ――もしかして新しい球種投げた?
 「はい。今日は蛭間選手に対して。140キロとかの球。ツーシームとは僕は呼びたくない。でもスプリットでもない。前回の試合(4月5日)でも投げました。真っすぐの遅い版。真っすぐと同じ球速で投げたい球。クオリティーは低いので、まだ要改良。(1軍で)投げるかは分かりません」

 ……。これはもう、今永にしかわからない感覚。WBCでは自己最速の154キロを良質の直球で計測した。その上で、さらなる球速を求めるのではなく「遅い直球」に挑んでいるという。

 プロ8年目が、無限に進化するため求めた「遅球」。現状でも「ハマのエース」として実力十分の中、その探究心は底なしだ。

 今季1軍初登板は近い。25年ぶり日本一へチームをけん引する舞台が迫る中、29歳が示した「哲学的」向上心に記者は驚くしかなかった。(大木 穂高)

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2023年4月17日のニュース