敵地もマー君復帰を歓迎 登場曲を流す異例の演出 仕掛け人が明かした理由

[ 2021年3月8日 08:30 ]

<中日・楽天OP戦>2番手でマウンドに上がり、力投する田中将(撮影・椎名 航)
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 気づいた人も多かっただろう。6日の中日―楽天戦。田中将大投手(32)がマウンドに上がり投球練習を始めるとアイドルグループ「ももいろクローバーZ」の曲が流れた。

 5回はかつて登場曲にも使っていた「走れ!」、6回は「ツヨクツヨク」。田中将が「モノノフ」(ももクロのファン)なのは広く知られている。お気に入りの曲が日本球界に復帰した右腕の背中を押すように、球場内に響き渡った。

 「日本にマー君が帰ってきてくれた。観客の前で投げるのは、13年の日本シリーズ以来。楽天ファンだけでなくビジターのファンも歓迎しているよという演出です」

 仕掛け人の中日球団職員、石田裕貴さんが理由を明かしてくれた。田中将が日本のファンの前で投げたのは2680日ぶり。実際にマウンドに上がると、多くの観客がスマートフォンでその姿を写真に収めていた。

 そして石田さんはこうも続けた。「ももクロでテンションを上げて本気になって、ドラゴンズの選手と戦ってほしかった」。中日の選手にとっては、日米通算177勝と対戦できる数少ない機会。田中将にスイッチを入れてもらう狙いもあったのだ。

 本来、イニング間などは自軍の先発投手の登場曲を流すことがほとんど。実際にこの日の試合序盤は中日の先発・柳の登場曲が流れていた。

 相手チームの選手の登場曲を流すのは、ご法度。今回の演出について石田さんも「公式戦だとさすがに難しいですよね。オープン戦だから実現できました」と説明した。

 登板後、田中将はももクロの曲が流れたことに「聞こえていましたよ」と粋な計らいに笑みを浮かべたという。

 実は石田さんは元楽天の球団職員。13年には球団初の日本一も間近で見た。17年から地元・愛知に戻り中日職員に“移籍”した経歴の持ち主である。

 敵味方、セ・パの垣根を越え野球界を盛り上げようという、心温まる演出だった。(記者コラム・徳原 麗奈)

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2021年3月8日のニュース