中日の契約更改騒動に思う 選手は子どもたちに夢を、球団は選手に夢を

[ 2020年11月30日 13:30 ]

保留者が相次ぐ中日の契約更改
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 【君島圭介のスポーツと人間】日本プロ野球選手会が、中日球団に抗議文を送ったという。26、27日の契約交渉で木下拓、福、福谷の3選手が保留。選手会は査定の事前説明に不十分な点があったこと、加藤宏幸球団代表のメディアへの発言が、年俸金額でもめているかのような印象を与えたこと。この2点を問題視した。

 交渉を担当した加藤代表が保留理由を「金額です」と話したことが、騒動のきっかけとなった。のちに「金額でもめているわけではない」と訂正したが、ドラゴンズを愛する選手の心を踏みにじる軽率な言葉だった。

 福谷は交渉の席で査定にチームの方針が見えないとし、「(春季キャンプの)読谷で(ドラフト1位)石川昂と同じ部屋だった。彼らを本当に尊敬するし、4年後5年後、中心選手になった時に、シーズン後、皆が来年に向かって良いモチベーションになるほうがいいと思い、お伝えしました。今、来年に向けてチームがどうしたいか、入った方がいいのでは」と将来的なビジョンについて尋ねたという。

 球団から明確な返答がなければ選手が不安になって当然だろう。今季はコロナ禍でレギュラーシーズンの試合数を143試合から120試合に削減。無観客でスタートし、総観客数はセ・リーグが昨季から81%減、パ・リーグが82%減と落ち込んだ。チケット収入に加え、球場でのグッズ販売や飲食の売り上げも減少。球団経営が悪化しているのは誰もが理解している。

 今年は東京五輪、インターハイから地域の小学生大会まで多くのスポーツイベントが中止になった。その状況で、120試合でも開催したプロ野球の努力は称えたい。球場に足を運べなくてもテレビやインターネット、新聞で選手の活躍を知った子どもたちがどれほど喜び、勇気づけられたか計り知れない。

 選手は心身を鍛え、超人的なプレーをする。それを査定するのが球団だ。「チームのため、どういう仕事をすることが一番いいのか」。それを選手は知る必要がある。160キロの剛球で完投できる投手や毎試合特大ホームランを打つ選手だけではチームは成立しない。福谷らが求めているのは、チームの理想とそこに向け、選手それぞれに求めている役割の説明だ。それを明示出来ないなら、経営責任を放棄していると取られても仕方ない。

 儲かったら大盤振る舞い。不景気だから給料カット。そんな「昭和」の労使関係は、物心ついたときからインターネットと成長してきた今の選手には通用しない。まずは将来的なチームのビジョンを提示し、選手にどんな役割を担って欲しいのか明確に伝え、現時点でどこまで期待に応えているか、それを明示してこそ査定だ。そのビジョンには将来性があるか。子どもたちに夢を与えるものなのか。まず選手に夢が伝えられなければ、子どもたちに伝わるはずがない。(専門委員)

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