【デーブ監督独占手記】感謝1勝…西武解雇時に支えてくれた闘病中の恩人へ

[ 2015年3月29日 09:00 ]

<日・楽>松井裕(右)からウイニングボールを差し出され「いいの?」と言いながらうれしそうに受け取る大久保監督

パ・リーグ 楽天4-2日本ハム

(3月28日 札幌D)
 楽天の大久保博元新監督(48)が開幕2戦目で初勝利を挙げた。星野仙一前監督(68=現シニアアドバイザー)の退任を受け、2軍監督から内部昇格。西武でのコーチ時代に暴力行為で解雇されるなど波瀾(はらん)万丈の野球人生を送ってきた。どん底からはい上がった男が、スポニチに独占手記を寄せた。

 本当に選手が精いっぱいやってくれて、感謝の気持ちしかない。昨季、監督代行で初勝利した時は、松井裕もプロ初勝利だったのでウイニングボールはあげた。だから今回は「お返しな」ともらった。このボールはおふくろに渡す。でも、本当はもう一人あげたい人がいる。現役時代からお世話になっている「つるべ寿司」の親方、大橋安彦さん。2010年に西武をクビになった時、助けてもらった。当時かなりの人間不信に陥り、荷物を抱えて階段を上るおばあさんを手助けするのにも「痴漢や強盗に間違われたらどうしよう」とためらうぐらいだった。

 その時、親方から「100人中51人が良い人と言えば、良い人。でも51人が悪い人と言えば、悪い人という評判になる。1人、2人のために自分の生きざまを変えない方がいい」と言われた。この言葉があったから信念を変えずにいられた。もし、人にこびを売ったり、自分の生きざまを変えていたら、楽天にも呼ばれなかったと思う。親方は今、肝臓がんを患っていて、店を畳んで闘病している。開幕まで持つか分からない状況だったけど、何とか持ち直している。だから、2勝目のボールと、来年も監督だったら来シーズンの初勝利のボールを渡す約束もした。

 08年に西武の打撃コーチになった。1年目で日本一になれたけど女性問題で編成に移った。2軍でコーチに戻った10年の暴力事件。一部報道で罰金を取ったと書かれたが、俺は取っていない。暴力行為というのは平手で頭をパチンと。こいつを何とかしたいという思いで皆の前でやった。警察が入ったわけではないけど確かに暴力行為だよね。それでクビになった。

 人には3大欲があって一般的には食欲、睡眠欲、性欲。でも、俺は違う。一つはこれっていう職業に出合いたい。俺の場合、出合えた。次は人のぬくもり。俺にとって基本はおふくろ。おふくろを安心させたい。親孝行したい。そして、最後の欲は、人の役に立ちたいこと。

 そういう中で楽天から誘いを受けた。楽天に入ると決断するまで3カ月ぐらいかかった。現役時代、巨人で打撃コーチとして指導してもらった中畑さん(DeNA監督)に話をしたら「行くしかねえだろ。何考えてんだ」と言われたけど、決められなかった。でも、最終的に星野前監督に「うちの若い衆になれ。しっかりやれ。結果出せ」と言われ「きょうから“おやじ”と呼ばせていただきます」と決意した。おふくろは「選手の時とは責任が違う」と大反対だった。今年1月25日の激励会。おふくろが安部井寛チーム統括本部長に「今からクビにしてください」と言ったくらい。今でも不安がっている。

 いろんなことで迷惑をかけたけれど俺の中では20年後、笑い話になっていると思う。何もやらないで後悔するよりも思い切りやりたい。みんな肥やしになる。誰も失敗したことない人なんていない。エジソンもそう。電気を発明するまで3万回も失敗した。選手も失敗が勉強になる。3万打席ノーヒット、3万試合負けてもいい。そうやって学べばいい。 (東北楽天ゴールデンイーグルス監督)

続きを表示

2015年3月29日のニュース