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当たるヤマメの皮算用

[ 2017年6月6日 07:26 ]

新緑がまぶしい四時川で竿を出す
Photo By スポニチ

 5月の雨量は記録的に少なく、夏日は記録的に多かった。気象の表現で記録的といわれることが多くなっている。農産物や、釣りにも影響がありそうだ。そんな中、福島県の鮫川水系四時川(しどきがわ)に釣行した。(スポニチAPC 綾部 丹堂)

 都会で生活していると気付かないことだが、渓流の釣り旅をしていると、その旅がささやかなタイムトラベルなのだと思うことがある。

 日本は小さな島国だが、縦長の平面的地域差に、山国としての垂直的変化が加わり、それらに季節の流れが重なると、出合う自然は千変万化の多様な顔を見せてくれる。時空を超える感がある。

 そこに日々刻々の気象の変化が起こるのだから、自然に対応しなければならない釣りの条件は無限になる。

 それが面白味になっているといえそうだ。

 3月には雪の奥飛騨でテンカラの苦戦を楽しんだが、翌月には田植えの済んだ温暖な四国・瀬戸内から、高知に走り、仁淀川で宝石のような“仁淀ブルー”でアマゴを釣るといった旅が楽しめたのである。

 今年はちょっと遠くの渓流から釣り旅が始まったが、その後は、やはりホームグラウンド鮫川へと向かっていた。

 鮫川は福島浜通りの最も南に位置している。

 鮫川村の丘陵地帯からの流れは、広大な流域面積を有し、水量も豊富で渓流釣り、アユ釣りを楽しませてくれる。

 支流の四時川、入遠野川などはアユ釣り、ヤマメ釣り場が重なり時季を使い分けることになる。

 そんな中、四時川のダム上流は渓谷の風格十分な魅力的渓相のヤマメだけの釣り場である。

 堰堤(えんてい)での取水などもあり、安定した水量が望める、男犬平(おいぬだいら)集落跡の上流の堰堤からが釣り場である。ただ人気の釣り場だけに、釣り人のプレッシャーは覚悟しなければならない。

 今回は、プレッシャーの強い釣り場をちょっと避けることにした。

 以前から気になっていた、集落跡からはかなり下流の第2発電所の吐き出しの辺りに入渓することにしたのである。

 5月は少雨で減水のはずが、2日ほど前の雨が周辺を潤していたようで、しっかりとした水量を見せていたのは予測外だった。

 釣り場は発電所下流の堰堤のたまりに流れ込むわずかな区間なのだが、あえてここを狙ってみたのである。

 堰堤のたまりにはヤマメが棲みついているはずだ。このヤマメは餌を求めて、流れを溯上(そじょう)することがあるはずである。

 これがこの日の皮算用だ。

 バックウオーターからゆっくりと毛バリを打ちこんでいく。すると、5、6メートル上ったところで、水面がムクッと動いた。合わせた竿が曲がる。

 この日、意識して使った柔らかめのテンカラ竿が大きく曲がって、糸が張り詰め、良型のヤマメが水中を走る。寄せに苦労する時間の緊張感はいつでもいいものだ。取り込んだのは良型のパーマーク鮮やかなヤマメである。

 こういう皮算用の的中はそう多くないだけに、気分がいい。

 わずかの距離のポイントで、3度竿が大きく曲がった。

 ▼釣況 鮫川漁協=(電)0246(65)6758。日釣り券1500円。

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