「本塁打を打たせる男」の思い 阪神・野口に“紅白戦でアピールしろよ”

[ 2024年2月11日 08:00 ]

打撃練習する阪神・野口(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之の談々畑】阪神・井上広大と野口恭佑が競うように大きな放物線を外野芝生席に放り込んだ。三塁側から打撃投手が投げるレーン、打撃マシンをカーブに設定したレーン、そして打撃マシンをストレートに設定した3カ所のフリー打撃。3連休初日の土曜日、気温17度、天気は快晴。今キャンプ最多の観衆1万1000人の虎ファンは若い2人のその打球に今季の飛躍を期待した。

 この組の打撃投手を務めていた中井伸之が、この“本塁打競争”を盛り上げた演出家だ。3カ所で計23本の柵越えを放った井上に6連発を含む17本、野口にも3カ所で計13発のうち11本を献上。スタンドから湧き起こる拍手を、中井もマウンドで心地よさそうに聞いていた。

 「ホームランを打ってほしいと思って投げていましたよ。この辺はどうだ…ってね。それはボクだけじゃなく、打撃投手はみんな、打者に気持ち良く振ってほしいと思って投げていますから」

 1995年から30年目のベテラン打撃投手は、きれいな球筋で制球も良く、打者から打ちやすいと評判。これまでも新外国人選手の初めてのフリー打撃の相手を務めてきた。どんなに実績のある大物でも物おじせず淡々と打たせてきた。

 今キャンプでもシェルドン・ノイジーやヨハン・ミエセスの組で投げることが多く、実は支配下選手に昇格したばかりの2年目の野口にはこの日が初めてだという。「井上には何度も投げたことがあるので好きなコースも知っていますが、初めての野口には最初はいろいろコースを変えてみて、得意なコース、飛距離の出やすいコースを探しました。やっぱりインコースの、高さは真ん中から低めの方が好きなんだと思いました。内角高めはあまり振らなかったですね」

 その配慮に野口も感謝する。「中井さんがそう言われたんですか。ああ、そうだったんですね。インハイが嫌いなわけではないのですが、内角球は自然に体が回って飛んでいくといいますか…。今は外の球は右前に落とすのではなくて、センターに柵越えできるようにしていきたい」

 打たれるのではなく、打たせるのが仕事。中井は、野口が少しでも打撃の状態を上げてくれればうれしいと思い、打たせていた。11日の1、2軍合同紅白戦で「バットでアピールしろよ」というメッセージにも聞こえた。 

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