【内田雅也の追球】脅威の「四球を奪う力」 侍ジャパンと同じ得点パターンが目立っていた阪神

[ 2023年3月26日 08:00 ]

オープン戦   阪神7―0オリックス ( 2023年3月25日    京セラD )

<神・オ>初回、熊谷は四球を選ぶ(撮影・北條 貴史)
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 オープン戦とはいえ久々快勝の阪神で、いぶし銀のように光っていたのが四球である。奪った7点のうち1、6、7回裏の6点はすべて四球が起点となっていた。

 1回裏は1死から熊谷敬宥がカウント1ボール―2ストライクと追い込まれながら直球をファウルし変化球を見極めて出た。シェルドン・ノイジー右前打、大山悠輔先制3ランとつながった。6回裏は梅野隆太郎の四球を2死後、近本光司が三塁打で還した。7回裏は大山、佐藤輝明の連続四球から梅野、糸原健斗が適時打で還した。

 あらためて四球の脅威を感じる。先のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一となった侍ジャパンも大会新記録となる7試合で四球64個を奪っていた。四球で好機をつくり、強打で還す得点パターンが目立っていた。

 これを「選球眼」と言えば素っ気ないが「四球を奪う技術」なのだと阪神打撃コーチ・今岡真訪が10日前に語っていたのを思い出す。横浜スタジアムで話した際「今年は四球をよく取れているでしょう」と言った。「今はオープン戦ですから“待て”など待球策などはしていません。それでも四球が多い。そのうち、12球団でトップになるんじゃないですか」

 この予言が見事に当たった。阪神はこの日得た四球6個を加え、オープン戦通算で73個(16試合)。楽天の76個(19試合)に次ぐ数字だが、1試合平均4・56個は12球団最多である。

 今岡は「目の問題ではありません」と話していた。「待つ、見るのではなく、打ちにいって見送れている。タイミングやバッティングの形ができているからなんです」

 なるほど、四球を得るのも奪うのも技術なのだ。マイケル・ルイス『マネー・ボール』(ランダムハウス講談社)で主人公のアスレチックスGMビリー・ビーンが「選球眼が生まれつきの問題なのかもしれない」と漏らしているが、実は鍛えることができるのだ。

 監督・岡田彰布は現役時代「2ストライク後の本塁打率」が王貞治らをしのぎ、歴代最高だと、ある記録マニアから投書をもらった。ボールをよく見極める打者だった。

 「追い込まれようが、ストライクゾーンは変わらん」とキャンプ中、選手たちに言った。ボール球を追いかけない姿勢が浸透しているのかもしれない。=敬称略=(編集委員)

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2023年3月26日のニュース