侍・栗山監督 「文句じいさん」になっても取り組んだ「大会の発展」

[ 2023年3月26日 05:05 ]

23日に帰国した栗山監督(撮影・藤山 由理)
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 【侍ジャパン正夢舞台裏】宮崎合宿の第1クールを終えて、自らのことを「文句じいさん」と呼んだのは栗山英樹監督だった。大会本部と大リーグ機構(MLB)に対して突きつけた数々の要望。それは侍ジャパンだけではなく、今後のWBCのためでもあった。

 「こっちはいろんな要望をずっと出している。100個くらいね。凄く言ってるよ、文句じいさんくらい」

 決して冗談などではなく、相当数の要望を出してきた。その中で大会本部から認められた数少ない案件の一つが、日本製ロジンの使用だ。過去の大会ではローリングス社製のMLB仕様のロジンだけだったが、今大会は日本の要望が認められてミズノ社製のロジンも使用できた。滑るWBC使用球への適応に苦しむ投手がいる中で、使い慣れたロジンがあることは大きな安心材料となった。

 ただ、栗山監督が言う通り、侍ジャパン側の要望のほとんどがはね返された。最も大きかったのが、大リーガーの日本国内での壮行試合などの試合出場が認められなかったことだ。侍ジャパンは大会への調整のために宮崎合宿でソフトバンクと2試合、名古屋で中日と2試合の計4試合を実施。その4試合にメジャー組は出場できなかった。昨年から強く要望し続けたが、掛け金が巨額となる保険の問題などもあってMLBが拒否。結局、試合で調整ができないのを承知で宮崎合宿から参加したのはダルビッシュだけだった。大谷、ヌートバー、吉田は米国でのオープン戦で調整してから合流。試合に出場できたのは本番直前の3月6、7日の強化試合(京セラドーム)からで「これでは、大会前の調整を全チームが平等にできない」と訴えた。

 これまで強制だった米国入り後の練習試合も、栗山監督は選手の体調を最優先して行わなかった。選手がプレーしやすい環境を整えるのが自分の役目。それが栗山監督の信念だが「次の大会から“これはこうじゃないとダメ”ということを凄く言った。この大会を良くするために」と強調した。勝つためだけではなく、大会の発展のため。それが「文句じいさん」の正体だった。(WBC取材班)

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2023年3月26日のニュース