英明・下村 西宮で兄弟同日“デビュー”糧に戦い続ける 球審終えた兄が駆けつけ初戦の力投見届けた

[ 2023年3月26日 10:14 ]

第95回選抜高校野球大会3回戦   英明8-9作新学院 ( 2023年3月25日    甲子園 )

<英明・作新学院>2番手で登板した英明・下村(撮影・後藤 大輝)
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 【素顔で君にアイラブユー】忘れられない喜びと悔しさの両方を味わった。英明・下村健太郎(3年)は1点リードの8回途中から登板して3失点。打撃戦の末にチームも敗れた。

 初戦に臨んだ19日は特別な日になった。2学年上の兄・下村晃太郎氏(19)は西宮市の鳴尾浜球場でNPB審判員として公式戦の球審デビュー。午後0時30分開始のウエスタン・リーグ、阪神―広島戦でプレーボールをかけた。2時間17分後、同市にある甲子園の第3試合が始まった。弟で英明のエース右腕・健太郎は智弁和歌山戦で先発として初登板。兄弟が同じ日、同じ西宮の地で「デビュー」する奇跡だった。

 阪神の北條(光星学院出身)、前川(智弁学園出身)らの元甲子園球児も出場した一戦のジャッジを終えた兄。「終わったら見に行く」の約束を守るため、約5キロ離れた甲子園に急行して6回に到着した。6回を1失点と好投したサイド右腕の弟を、ギリギリで見届けることができた。

 子供の頃からキャッチボールをしてきた兄弟。弟が横手から投じる「クセ球」の直球は1球ごとにシュートしたり、シンカーのように落ちたりする。兄が発した「お前の直球は気持ち悪い」は褒め言葉だ。「気持ち悪い直球」は、甲子園優勝経験のある智弁和歌山を苦しめて前評判を覆す勝利をもたらした。その日の夜に兄弟で電話。弟は「ジョックロック(智弁和歌山のチャンステーマ)を聴きながら投げられたわ」と強がり、兄は「正気か、お前」と笑った。

 それぞれの舞台で戦いは続く。弟は夏に向けてエースとして成長し、兄は1軍の審判員として技術を磨き、甲子園に立つ。(柳内 遼平)

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