智弁和歌山吹奏楽部・湯川晄史郎さん 受験勉強を中断して奏でた“魔曲”「本当に楽しかった」

[ 2023年3月20日 05:20 ]

第95回選抜高校野球大会第2日・2回戦   智弁和歌山2-3英明 ( 2023年3月19日    甲子園 )

最後の演奏を終え、涙を浮かべる湯川(左)(撮影・柳内 遼平)
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 【素顔で君にアイラブユー】「魔曲」で甲子園に別れを告げた。第3試合となり、西日が照らした三塁側アルプスの智弁和歌山応援席。吹奏楽部3年の湯川晄史郎さんが奏でるホルンの音色に、声援が乗った。1点を追う9回、最後の打者が三振。同校の魔曲と呼ばれる「ジョックロック」を吹き続けた男は目に涙を浮かべた。

 「最後に声援のある甲子園に来られてよかった。声で今までにない一体感が生まれた。本当に楽しかった」

 受験勉強に専念するため2年秋で引退となる同校の吹奏楽部。今大会で4年ぶりに「声出し応援が復活」と知り「やらなくて後悔するよりやって後悔しよう」と受験勉強を中断し、甲子園にやってきた。ぶっつけ本番で臨んだ聖地での演奏。チャンスが訪れるたびに「魔曲」を奏で「久しぶりに吹いたので体力が追いつかない」と汗を拭った。

 5学年上で東大に現役合格した兄・龍之良(りゅうのすけ)さんは、同部でトランペットを担当し部長も務めた。兄が聖地で吹く「魔曲」に憧れ、同じ道に進んだ。入学以来、初めて演奏に乗った声援に「やっぱり高校野球の応援といったらジョックロック。キターー!と思いました」と声を弾ませた。

 志望大学は難関の京大。受験勉強の時間は一分一秒も惜しいが「仲間と一致団結できることを学んだ」と過ごしてきた時間に胸を張る。2時間19分、2万3000人の観衆に披露した集大成。「楽しかった」。涙交じりのやりきった顔を、春の日差しが照らした。(柳内 遼平)

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2023年3月20日のニュース