パドレス・ダルビッシュ WBCは「戦争に行くわけじゃない」気負わずに全力プレー

[ 2023年2月6日 05:00 ]

ファンと記念撮影するダルビッシュ
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 「武士の一分」ならぬ、ダルの一分――。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場するパドレスのダルビッシュ有投手(36)が4日(日本時間5日)、地元サンディエゴでのファンイベントに登場。同僚となる侍ジャパン戦士に、気負い過ぎることなく戦いに挑む心構えを説いた。メジャー組5人の中で唯一の宮崎合宿参加となる見込み。代表最年長の36歳の右腕による、精神的支柱としての熱いメッセージだった。

 目指すは世界一の座。気持ちが高揚し、熱き戦いになるのは当然だ。だがダルビッシュはそこに落とし穴を見る。「温度的にというか、ちょっと気負い過ぎ。戦争に行くわけじゃない」。ネットなどで侍ジャパン戦士のコメントなどを目にした。強烈な意気込みは伝わったが、前のめりになるのはご法度。この心構えこそ「ダルの一分」と言えた。

 「自分の好きな野球で(侍ジャパンは)オールスター中のオールスター。それなのにみんなで気負って、体が固まって、ガチガチになって…。もし米国(開催の準決勝、決勝)で負けたとしても日本に帰れないとか、そういうマインドでいってほしくない」

 戦国時代末期の1572年(元亀3)、徳川と武田による三方ケ原の戦い。敗れた徳川方の武士は全て武田方の方を向いて前のめりに倒れて死んでいたという。決して敵に背中を見せない三河武士の勇猛さを表すエピソード。これこそが「武士の一分」だが、ダルビッシュの考えは違う。数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験からの心構え。「気負う必要はないということは(他の選手に)伝えたい」と力を込めた。

 ただ、前提に全力プレーがあるのは当然。「練習や一塁までしっかり走るとか、ちゃんと自分のことはしないといけない」。重みのある言葉。代表最年長の36歳はメジャー組5人の中では唯一、17日からの宮崎合宿参加メンバーとなることが濃厚だ。パドレス球団からOKが出たためだが、後に続く選手への思いもあった。「これから先も日本選手がメジャーでプレーしながらWBCに行く。僕は“メジャーリーグでやってるから後から来ました”みたいなことはしたくなかった」。未来への道筋をつくる。これも大きな役割だ。

 世界一連覇を果たした09年の第2回WBCの胴上げ投手で、今回のメンバーで唯一、同大会を知る選手。「自分が年齢も一番上。いろんな若い選手とコミュニケーションを取れたら。(エンゼルスの)大谷君だけではなくて(ロッテの)佐々木君とか、みんなと一緒にプレーできるのが凄くうれしい」。気負わず冷静に、しかし心は熱く。侍ジャパンの精神的支柱は、もうすぐ日本にやってくる。(笹田 幸嗣通信員)

 ▼パドレスボブ・メルビン監督(ダルビッシュについて)彼は最も心配がいらない選手。今から投げろ、と言われれば4、5イニングは可能だろう。こちらに戻って来る時は(シーズンの)準備ができているはずだ。

 ▽武士の一分 藤沢周平氏原作の映画。山田洋次監督で06年に公開された。主人公の下級武士・三村新之丞を演じたのは木村拓哉で、妻役は檀れい。幕末における武士の名誉、夫婦の絆を描いた作品。「武士の一分」とは、命を懸けて守らなければいけない名誉や面目、などの意味。興行収入40億円を超えるヒット作となった。

 【一問一答】

 ――オフの調整は?

 「ずっとサンディエゴにいて、WBCもあるので調整は早めにしている。状態はいいと思う」

 ――宮崎での合宿に初日から参加する。

 「僕としてはそんなに難しい決断じゃなかった。パドレス球団がそれをOKと言うところが一番難しい決断だと思う。任せてくれた、信頼してくれたところに本当に感謝している」

 ――米国代表なども大物選手が出場する。

 「本気度というか、そこが僕の中であまりしっくりこない。周りの選手を見ても、調整のペースを早くしているかといえば、そうじゃない。春季キャンプの延長というふうにしかみんな思っていない。やっぱりシーズンが長いので」

 ――今後は?

 「(キャンプ地の)アリゾナには行かない。直接日本に行くつもり」

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