【内田雅也の追球】驚いた投内連係の「剛球」 岡田監督が求める実戦に即した練習

[ 2023年2月6日 08:00 ]

投内連係の練習をする才木(撮影・後藤 大輝) 
Photo By スポニチ

 沖縄・宜野座の阪神キャンプで初めて投内連係が行われた。投手を入れて内野手との打球判断、守備練習。キャンプの定番である。阪神は第1クールが2日だけで、3日を休み、この日は第2クール2日目だった。

 最初にマウンドに上った投手は西純矢で、捕手に向け、練習球を1球投げた。この球がものすごくて驚いた。全力に近い速球でど真ん中にバチンときた。本番の初球。これも剛球と言える球でど真ん中にバチンときた。

 なぜ、驚いたのか。普通、こうした投内連係で投手が捕手に投げる投球は、あくまで“仮に”投げているだけで、真剣に投げたりしない。言葉は悪いが、いいかげんな投球をしがちである。ところが、この日は140キロ級の速球が来て、目を見開いた。思わず、記者席で隣にいた記者に「あの球、見たか?」と言った。

 いや、西純だけではない。この日、投内連係に参加した才木浩人、浜地真澄、村上頌樹、桐敷拓馬、岡留英貴の6人全員が、投内連係“らしからぬ”投球をしていた。

 投内連係では全部で30本の打球を練習した。投手の投球に応じて、ノッカーの内野守備走塁コーチ・藤本敦士が打球を転がす。この30本、つまり投手としては30球のうち明らかなボール球は1球だけだった。ストライク率97%だった。

 加えて、投球モーションも皆、クイック投法だった。投手たちはクイックで速い球でストライクを投げていたわけだ。

 何げないことだが、大切なことだ。監督・岡田彰布が昨年までの評論家時代、投内連係での投手の投球が「いいかげん」だとよく嘆いていた。前回の阪神監督時代、オリックスでの監督時代も指摘していた。

 だから岡田に聞いた。「ああ、そのことか」と笑い、「オレが言うたんよ」と認めた。「ピッチャーはクイックをやって、しっかり投げろって。当たり前のことよ」。喫煙室。たばこをくゆらせながら、この日の投球に満足していたようだ。

 岡田は「練習のための練習」を嫌う。実戦に即した練習を求め、投手も本番さながらに投げなくては意味がない。監督として「練習方法そのものの間違いは許されない」と言い、自らにもコーチ陣にも厳しい。

 投手が真剣にクイック投法をし、本気の投球をした。その剛球に真剣味を見た。=敬称略=(編集委員)

続きを表示

2023年2月6日のニュース