あと30メートルで雲の上 故ブライアント氏を乗せて墜落したヘリは“安全圏”目前で急降下

[ 2020年2月8日 15:59 ]

カリフォルニア州カラバサスのヘリコプター墜落現場(AP)
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 1月25日に元NBAのスーパースター、故コービー・ブライアント氏(享年41)ら9人を乗せて墜落したヘリコプターは、あと30メートル上昇していれば視程を得られる雲の上に出ていたことが明らかになった。

 7日に米国家安全運輸委員会(NTSB)の調査団が事故原因などに言及したもので、ベテラン・パイロットのアラ・ゾバヤン氏が操縦していた中型ヘリコプターの「シコルスキーS―76B」のエンジンは故障していなかったことが判明。さらにあと100フィート(30・4メートル)上昇していれば、視程を得られるクリアなゾーンに達していたこともわかった。

 カリフォルニア州ロサンゼルス北西部にあるカラバサスの傾斜地に墜落したヘリは、濃霧で現在位置を把握することができなかったために航空管制局に誘導を求めたが、高度が低すぎてレーダーで捕捉されなかったために一気に4000フィート(1219メートル)ほど上昇。あと少しで濃霧や雲から脱出できるところに達していた。しかしなぜかその直前に今度は2300フィート(701メートル)も高度を下げ、時速290キロで傾斜地に衝突してしまった。

 AP通信の取材に応じた航空安全の専門家、キップ・ラウ氏は「雲の上に抜けていれば地平線が見えるので平衡感覚が戻ってくる。しかしこのような速度で雲の下部から突き抜けてしまえばコントロールできない」とコメント。一部の専門家は雲と霧の中でパイロットが上下を含めた平衡感覚を失う「空間識失調(バーティゴ(VERTIGO)」に陥った可能性を指摘しており、今後1年ほどかけて各種データから事故原因を分析するNTSBの今後の調査が注目されるところだ。

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