未来感じるソフトボールの世界的広がり 大いにある日本が果たすべき役割

[ 2019年12月27日 09:00 ]

WBSC選出、ソフトボール部門男子最優秀選手となった平林金属・松田光
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 来年の話をすると鬼が笑う、とは「不確定な未来について語れば、普段は笑わない鬼ですらあざ笑ってしまう」ということらしい。さあ、東京五輪イヤー。個人的な興味は大会中の選手の活躍より、五輪という舞台がその先どうなっていくかにあると言えば、鬼もあきれるか。

 国際オリンピック委員会(IOC)は五輪の立候補都市が減る現状に危機感を募らせ、開催都市に追加競技を選択する権利まで与えた。これが大会規模の拡大を招き、莫大な放映権料への依存度が高まることは間違いない。さらに「アスリートファースト」なる宝刀を抜き、さらに予算を肥大化させる結果になったのも周知の事実だ。もちろん、ステディな運営と従順さは世界トップクラスの日本=東京だから言えた“わがまま”かもしれないが。この時代、大会そのものの価値醸成を市場原理だけに委ねるのは、危険だろう。

 首をひねりたくなるのは、IOCや組織委員会についてだけではない。個人的に疑問があるのは、競技団体が目指す発展の方向性。特に、東京でやっと舞台に帰ってきたはずの野球とソフトボールだ。

 両者は五輪復帰を目指し、13年に世界野球ソフトボール連盟(WBSC)という統一団体を作った。そのWBSCは今も、東京五輪後のビジョンを示していない。24年パリ五輪からの除外は決まっている今、早く行動を、と危機感を抱いている関係者も多い。

 今年、WBSCの選出したソフトボール部門の男子最優秀選手に、日本男子の松田光(平林金属)が選ばれた。この最優秀選手は野球、ソフトボールの男女各1人ずつを表彰しているものだが、日本人男子として選ばれたのは、15年の大谷翔平(現エンゼルス)以来、2人目。松田はエースで、主砲。剛球豪打の二刀流で、今年6月にチェコで開催された世界選手権で銀メダルを獲得した日本の大黒柱だ。

 実はこの大会、決勝で日本を3―2で下して優勝したのは、アルゼンチンだった。世界的にみればダイヤモンドスポーツ、特に野球は北中米とオセアニア、アジアに強国が集中する。だが、16の国と地域が参加した男子ソフトボールの世界選手権は南米のチームが優勝し、8位にはチェコが入った。ここに、未来を感じるのだ。

 実際、専用の競技場が必要な野球と異なり、平坦なスクエアスペースがあればできるのがソフトボール。少年野球チームの多い日本ですら、プロ野球選手の競技の入り口になっているケースは多い。競技人口減少の今、ダイヤモンドスポーツの将来を、何に託すか。案外、手軽に始められる競技に、可能性が秘められているのでは?そして今、世界トップクラスの松田や女子の上野由岐子(ビックカメラ高崎)を抱えている日本が果たすべき役割は、大いにある。(一般スポーツ部デスク・首藤 昌史)

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