データで見る八村の第13戦 NBA267位からの逆襲
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ウィザーズの八村塁(21)はホーネッツ戦の第1Q5分52秒、右のコーナー付近にいたホーネッツのマイルズ・ブリッジズ(21)が逆のコーナーにいたP・J・ワシントン(21)へのパスを遮断。それはすぐに速攻につながり、トロイ・ブラウンJR(20)による得点につながった。
そのわずか18秒後、今度はテリー・ロジアー(25)がポストアップしたワシントンに渡そうとした“縦パス”を右手でかきだしてスティール。短時間の中でディフェンスの好プレーを立て続けに見せた。
NBAの主要な個人成績と言えば、得点、リバウンド、アシスト、そしてブロックショットとスティールの5部門。八村はこの日、スティールに「2」という数字を書き込んだのだが、実はその成績にはもうひとつの“顔”がある。
主要成績以外に監督やアシスタントコーチたちが重要視しているのが通称「ハッスル・スタッツ」という部門。「どれだけルーズボールをキープできたか」「どれだけ相手のシュートに対して立ち向かったか(コンテスト)」「どれだけリバウンドの際に相手を中に入れさせなかったか(ボックスアウト)」「どれだけオフェンスのファウルを誘発させたか(チャージング)」「どれだけ“壁”となって味方を助けたか(スクリーン)」といった一見するととても地味な部門が並んでいる。
この「ハッスル・スタッツ」の中で最も見た目ですぐにわかり、最も労力を要すると言われているのが「DEFLECTION(ディフレクション)」。「進路を妨げる」という意味で、相手のパスコースを手を使って歪める行為で、スティールはその中に含まれるものの、たとえそのあと相手側がボールをキープしていたとしても数字が付け加えられる。つまり八村のスティールにはディフレクションも2つ入っているのである。
さてホーネッツ戦を迎えるまで、八村の今季の1試合平均のディフレクションは0・9。出場時間が27・6分ある選手としてはいい成績とは言えず、NBA全体では267位だった。1位はペリカンズのガード、ドリュー・ホリデー(29)で35・6分の出場で5・2回。八村は4・3回もの“大差”をつけられていた。
ホリデーの1試合平均のスティール数は2・1なので、せっかくボールをはたきながら、半分以上が敵方の手元に戻っている計算になるが、この行為が相手のオフェンスのリズムを狂わせ、シュートの成功率を低下させていくことはデータになじめない方でも理解していただけるのではないだろうか?
その一方でこのディフレクションには「報われるかどうかはわからない」という負の側面がある。マークしている相手選手に、ハンズアップしてパスをさせないようにする行為、つまり「DENY(ディナイ=否定するという意味)」だけをやっていれば十分と考える選手もいるだろう。その先に一歩踏み出すことは自分のスタミナを削る恐れもあり、あるいは裏を取られてゴール下にもぐりこまれるという最悪のケースも考えられるので、どこで「手を出す」のかはとても難しい判断になる。
だから主要5部門の記録に顔を出す選手が必ずしもこの部門で数字を積み重ねているわけではない。ニックス時代の2012年シーズンに平均28・7得点で得点王になったカーメロ・アンソニー(35)はこのほどトレイルブレイザーズと契約してすでに2試合に出場しているが、スティールもなければディフレクションもない。出場時間24分と29分でともに0。五輪4大会出場を誇り、203センチというサイズにもかかわらず、ゴール下で各国の長身フォワードやセンターをフロントサイドのボックスアウトで身を挺して止めたベテランだけに、その意思さえあればいつでも数字を書き込める部門であるはずだが、シュートの精度を優先させると「手を出せない」のかもしれない。
ウィザーズに今、足りないもの。それは今季リーグ・ワーストとなっている失点(120・8)を下げていくための“ハッスル”だろう。八村が第1Qに見せた2回のディフレクションは、その欠けていた部分に電気刺激を与えたように思えてならない。
1試合でより多くのディフレクションを記録したチームの勝率は、シュート成功率、リバウンド奪取数などに一切関係なく53%。「半分より3%多いだけ」と、とらえるか?それとも「その3%で勝ちに行く」と、とらえるかはコーチと選手の考え方次第だ。
八村の1試合平均のディフレクションは0・9から1・0に上昇。ホーネッツ戦直後の段階ではランクは267位から240位にアップした。得点部門での伸びしろはさほどないかもしれないが、この隠れた部門では大きな飛躍が可能。次戦のキングス戦でも可能な限り“手出し”をしてほしいと思う。(高柳 昌弥)
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