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【レジェンズ・アイ】中村俊輔氏 三笘が象徴「堅守速攻」今後も日本の武器に

[ 2022年12月7日 05:10 ]

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会決勝トーナメント1回戦   日本1―1(PK1―3)クロアチア ( 2022年12月5日    アルジャヌーブ競技場 )

<日本・クロアチア>後半、ドリブルする三笘(撮影・西海健太郎)
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 フジテレビSP解説を務める元日本代表MF中村俊輔氏(44)が、W杯の魅力を語るスポニチ本紙の特別企画「レジェンズ・アイ」。第3回は、PK戦の末に敗れたクロアチア戦を含めた森保ジャパンの今大会の戦いぶりを振り返った。今季限りで現役を引退した天才レフティーは、堅守速攻が今後も日本の武器になると分析。一方で、さらなる進化へポゼッションサッカーのレベルアップも必要だと指摘した。

 「ベスト8の壁は今回も破れなかったけど、それ以上の何かを得たと思う」

 2大会連続での決勝トーナメント進出を果たしたものの、またしても8強の壁。それでも俊輔氏は、大きな収穫を得た大会だったと振り返った。クロアチア戦もボール保持率で下回り、PK戦の末に敗れたが、それほど大きな差は感じなかったという。

 「PKはしようがない。だから120分で決めないといけなかったと思う。スペイン、ドイツほどのチーム力の差もなかったから、決められたという感覚は、選手にはあったと思う。それでもクロアチアと対等にできるようになったのは、素晴らしいこと」

 長い間日本の10番を背負った俊輔氏も、日本サッカーの進化を自分のことのように喜んだ。中でも、俊輔氏が進化したと指摘するのが、日本人の俊敏性、豊富な運動量を生かしたカウンター戦術の確立。

 「W杯の戦い方としては今回、やっぱり堅守速攻という形が多かった。コスタリカ戦以外は、相手がボールを保持する時間が長かった。でもそれは、相手が極端に強いから。その中で、日本の良さを引き出せたし、W杯で“そういう戦い方はあり”だって、改めて示せたと思う」

 特に俊輔氏が目を見張ったのが、ジョーカーとして相手に脅威を与えた三笘だ。クロアチアも徹底マークで対抗してきたという。

 「3トップの右の選手が、(三笘の)ファーストディフェンダーになっていた。それで左のCB(谷口)がボールを持ったときに、(右MFの)モドリッチがプレッシャーに出ていく。もしサイドで抜かれても、右サイドバックがいるから、(インサイドハーフと右サイドバックの)2枚で見られていた」

 三笘はクロアチア戦で得点に絡めなかったが、ドイツ、スペイン戦では決定機を演出。日本の堅守速攻の象徴的存在となった。俊輔氏も「その存在は大きかった」と絶賛した。一方で、課題も残ったという。

 「今後は、コスタリカのような試合展開になったときに、どう崩すか。今までどっちかというと、対アジアではそういう戦いをやってきた。でもコスタリカ相手でも崩せなかった。だからそこが課題になる。アジアで戦っているうちに堅守速攻の戦い方の精度も高める。それができれば、今度はW杯で、ボールをもうちょっと保持して、相手を揺さぶりながら、ゴールを狙うことができると思う」

 W杯アジア予選などボールを持てる対アジアとの戦いでも、意識的に堅守速攻に磨きをかけ、加えてポゼッションサッカーの精度を上げることができれば、チームはもう一段階ステップアップが可能というわけだ。レベルアップできる環境は、今大会で優勝経験国を撃破したことで、そろったとも指摘する。

 「今後、強豪国も対戦を受けてくれるようになると思う。いろんな国が親善試合をやってくれると思う。W杯でこういうことが起きるから、“今のうち日本とやっておこう”みたいに。そうやっていろんな良い環境が回ってくるはず。世界の日本に対する見方も変わってくると思うし、Jリーグもサッカー協会も変わっていける」

 収穫と課題がはっきりとした今大会。俊輔氏は「開幕戦でドイツと対戦して、ポゼッションどうこうじゃなくて、どんな相手だろうと、サッカーは分からないというのを示せた。世界もそうだけど、日本が一番、希望を持てたんじゃないかと思う。それは本当に大きいこと。日本サッカー界の今後の道しるべみたいなものができた大会だったと思う」と、日本サッカー界の明るい未来を口にした。

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2022年12月7日のニュース