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森保監督 旅の終わり「心残りない」 批判消した2度の歓喜を胸に「新時代」の始まり

[ 2022年12月7日 05:10 ]

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会決勝トーナメント1回戦   日本1―1(PK1―3)クロアチア ( 2022年12月5日    アルジャヌーブ競技場 )

<日本・クロアチア>試合後1時間以上経ち静まり返ったピッチに姿を見せた森保監督は、ピッチに向かって一礼して引き揚げる(撮影・小海途 良幹)
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 8強の壁にまた、阻まれた。日本代表は5日、決勝トーナメント1回戦で前回準優勝のクロアチアと対戦。前半43分にFW前田大然(25=セルティック)が先制点を決めたが後半10分に追いつかれ、1―1から延長戦、PK戦(1―3)の末に惜しくも敗れた。18年ロシア大会に続いて4度目の挑戦でもベスト8には届かなかったが、ドイツ、スペインを破り、クロアチアとも互角な戦いを繰り広げた森保一監督(54)は、「新時代」の到来を強調した。

 ベスト8の世界は見られなかった。ただ、森保監督の前には、希望に満ちた世界が広がっていた。「選手たちは新時代を見せてくれた。世界を見上げるだけではなく、追いつけから追い越せに、本気でマインドを変えさせてくれた」。6日朝は目覚めるとつい、ベッドの上で「勝つためにもっと何かできたことがあったか」と考えてしまった。ただそれは後悔ではない。「心残りはない。今できることは全てやれた」。ドーハを歓喜の地に変えられたかを問われると、キッパリ言い切った。「変えられたと思う」――。

 クロアチア戦では4試合で最も前半から積極的に仕掛け、初めて先制点を奪った。後半にクロスから追いつかれて押し込まれたが、前回ロシア大会のベルギー戦のように逆転までされなかったのは、日本の個と組織の成長だった。一方で、ドイツ、スペインにははまった交代やシステム変更による“奇襲”は、本気の対策をしてきたクロアチアにははまらなかった。「クロアチアは全てうちの良さを消してきた」。堂安のコースも切り札の三笘も、ことごとく封じられた。

 「終盤はなかなか形をつくることがなかった。より継続して速攻、遅攻も含めて試合をコントロールできるように上げていかないといけない」。4年後に壁を破るために挙げた課題は、全ての時間を通じて主導権を握る力を付けること。今大会はベースの4バックに3バックを織り交ぜながら、戦術のパターンを増やして挑んだ。ただ、策を増やしてもかなわない個々の能力そのものの力量差もあった。「策に溺れすぎず、まだまだ個々の力を付けてもらえれば、また日本の団結力や組織力が生きる」と説いた。

 18年夏からA代表の指揮が始まった。17年10月に就任した五輪監督との掛け持ちで、時には大学生の試合まで足を運び、1日に10試合も欧州組の試合を見た。「(仕事量の多さから)クレージージョブと言われますけど、私の中ではクレージーではない。幸せな仕事」。世間の批判を浴びても「議論になるならうれしい」と平然とできた。ドイツ、スペインからの白星は、確かな歴史の転換点となった。

 W杯予選の初戦から本大会まで一貫して指揮した初めての日本人監督として、4年半で日本を底上げした。続投を推す声もある中、今後に向けては「現実的な話は全くしていないのでこれから考えていきたい。日本のサッカーに貢献したいという思いはあるので、またそこは流れに沿っていきたい」と話した。最後のピッチでは、誰もいなくなったスタンドに向かって一人、四方に礼。日本の新時代到来を告げたドーハの地で、全ての人への感謝の気持ちをささげた。

 ≪君が代の後 ノートに「日本に不可能はない」≫試合前の君が代斉唱の後、森保監督はおもむろにメモ帳を取り出した。「日本に不可能はない。JAPAN IMPOSSIBLE is NOTHING」「日本人であること 喜び 誇り 幸せに」。あふれる感情を思いのままにしたためた。

 森保監督は試合中でも頻繁にメモを取ることで有名だ。ドイツ、スペインを撃破した試合でも書いていたことから、海外メディアからは「森保のデスノート」としても話題になった。ベスト8の壁は破れなかったが、4年後、森保監督のメモは「森保の予言書」になるかもしれない。

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