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【評論家5氏クロストーク】日本のMVPは柴崎 プレーの幅広がり新司令塔君臨

[ 2018年7月4日 11:30 ]

W杯決勝トーナメント1回戦   日本2―3ベルギー ( 2018年7月2日    ロストフナドヌー )

MVP級の活躍を見せたMF柴崎(撮影・西尾 大助)
Photo By スポニチ

 戦前の厳しい予想を覆し、3度目のベスト16入りを果たした日本の今大会の戦いはどうだったのか。未来への指針は見えたのか。スポニチ本紙評論家の5氏が日本代表の戦いを分析し、総括。日本の大会MVPも選定した。

 【ベルギー戦】

 加茂周(元日本代表監督) 体を相手に付けて自由にプレーさせないようにうまく封じていたが、後半途中から半歩ずつ遅れるようになってきた。疲労に加え、ベルギーがギアを入れたためだが、徐々に隙を与えた。2点差は1点差よりも難しい。1点返されると追いつかれたような雰囲気になる。

 佐々木則夫(元なでしこジャパン監督) 日本は連係した守備と、距離感を保って連動したパスワークで2点奪った。先制点はショートカウンターからで、特長も出ていた。ただ、2点取ったことで全体的に浮ついてしまった。3点目を取るのか、守るのかはっきりしなかった。

 城彰二(元日本代表FW) 攻撃はプラン通り。ボールを支配される中で、切り替えが早く、よく連動していた。1点目はボールを奪った瞬間、3人が連動し、柴崎が原口へ精度の高いパスを通した。2点目の乾のミドルシュートも素晴らしかった。

 中田浩二(元日本代表DF) 日本が2点取ったところで守り方を変える選択肢もあった。後半20分に長身のフェライニを投入し、ルカクと2枚並べてきた。日本は3バックにする選択肢もあったと思う。しかし、ガーナ戦でうまく機能しなかったので、大会では4バック。監督交代が大会直前で、準備する時間が足りなかったことが惜しまれる。

 鈴木啓太(元日本代表MF) 攻撃は狙い通りに早い攻めができていた。香川と乾が相手の右ウイングバックとCBの間のスペースをうまく使っていた。先制点は相手の左サイドのスペースに柴崎がスルーパスを出し、原口がスプリントした。いいボールが相手守備ラインの裏に出続けていた。

 【MVP】

 加茂 柴崎。ボールを持った時のパスのタイミングやコースが良かった。ベルギー戦の先制点も原口の動きをよく見ていいタイミングでパスを出した。

 佐々木 乾。決定力があり、攻撃を引っ張った。左サイドで乾と長友、香川がうまく連係し、結果を出していた。

 城 柴崎。精神力もフィジカルもあり、中盤でゲームをつくれる。スペインで守備の大切さを覚えてプレーの幅が広がった。

 中田 大迫。相手を背負って時間をつくり、周囲を生かした。コロンビア戦のゴールで勢いが付いた。乾や柴崎が生きたのも大迫がいたからだ。

 鈴木 柴崎。この大会では彼がゲームをコントロールしていた。4試合全てスタメンで、チームの中心として活躍。新しい司令塔としての働きを見せた。

 【越えるべき壁】

 加茂 ここから先へ勝ち上がるのには個の強さ、1対1の強さが必要だ。攻撃でも守備でも相手が1人や2人なら個人の力でなんとかという強さが必要になってくる。

 佐々木 選手はJリーグでベースをつくって欧州へ渡り、経験を積んでいるが、今後はJでも質を高めていけるようにする必要がある。ヘディングの競り合いも、相手が長身だから勝てないというのではなく、体をぶつけて自由にヘディングさせないなどの工夫も必要だ。

 城 4年ごとに監督を交代させていたのでは積み上げがない。日本のことは日本人が一番分かるので日本人監督がいい。経験のある外国人をアドバイザーとしてつけ、融合させるのもいいだろう。

 中田 今までで一番ベスト8に近づいた。だが、結果が良かったからといって、それで終わらせてはいけない。今回、日本らしさが随所に出たが、これを継続することが大切だ。大会直前に監督を代えなければならなかったことも検証してほしい。

 鈴木 マッチメークが重要だと思う。アウェーに出て、強豪と対戦してほしい。国内での親善試合では得られない経験をすることができる。

 【大会総括】

 加茂 西野監督が短期間でよくチームをまとめた。選手が不満げな態度を見せるところもなく、監督が信頼されていた。監督のチームをまとめる力が素晴らしかった。

 佐々木 技術委員長の経験もあり選手を熟知していたのでイメージ通りのチームがつくれた。本田の起用法もはっきりとしていた。香川と交代するケースが多かったが「攻める」というメッセージが込められていてチームに一体感があった。

 城 西野監督の采配は勝負にこだわっていたが、2カ月で戦える集団にできたのは監督の手腕だった。

 中田 初戦のコロンビア戦の入りが素晴らしく、一気に乗ることができた。大会直前のパラグアイ戦でパフォーマンスが良かった選手を起用し、手応えをつかんだ。自分たちでアクションを起こすサッカーを貫いた。

 鈴木 コロンビア戦もセネガル戦も、ベルギー戦も日本は点を取りにいっていた。強豪国に対して真っ向から攻めて勝ちに行き、殴り合った。こういう戦いは今までの日本にはなかったと思う。

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2018年7月4日のニュース