「こち亀」秋本治氏 異例の4作同時連載 両さん復活あるかも!?
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人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)」を連載40年で描き終えた秋本治氏(63)が早くも再始動する。21日発売のグランドジャンプ(集英社)で始まる「BLACK TIGER―ブラック・ティガー―」を皮切りに、異例の4作同時連載に挑戦する意向で「ベテラン漫画家の新しいスタイルにしたい」と意欲満々。その中で、こち亀の主人公・両さんが復活する可能性もにおわせた。
――こち亀を9月に終えて「両さんに有給休暇をあげる」と話した秋本氏だが、本人に休む気はないらしい。
逆に時間が空いたから描きたいモノが描けると思った。僕にとっては有給休暇のようなもの。アシスタントさんには休んでもらったけど、僕自身は別のネーム(コマ割り、人物配置、セリフなどを描いたコンテ)をやったり。仕事していた方が落ち着く。趣味でも漫画描いちゃう方。休んでどうすんだって(笑い)。
――こち亀が終わっても、生活に変化はないようだ。
変わった事といえば、両さんのネームをやらなくなったことだけ。描く時間帯もこれまでと全く同じで、朝9時から夜8時くらいまで、ずっと仕事。ただ両さんを描かなくなったので、本当に終わったんだなと最近、ちょっと寂しいです。
――それにしても新作を4本も始めるのは異例だ。
普通は1本…せいぜい2本でしょうね。どうしても描きたいのが7本あり、これでも絞り込んだ。凄く厳しいスケジュールではないと思います。時間を置くと次にやりたいモノが出てきたり、モチベーションが下がったり。描きたい時が(描くのに)いい時期なんです。
――4本は、それぞれの掲載誌に不定期に発表していく異例の連載形態をとる。
各誌の担当者に「シリーズ連載」という新しいスタイルでやれないかと相談した。僕くらいのベテランが毎週や毎月連載するのは大変。でも間を開けて、例えば1回描いた3カ月後に次回となれば、その間にアイデアが練れる。今後ベテラン作家がこういう形でやれたら面白いのではないかという実験でもあります。ただ、4誌とも納得してくれないとできない。各誌に企画書を提出し、了解してもらえたからできること。
――4作とも女性が主人公。こち亀で中年男の両さんを40年を描き続けた反動だろうか。
それ、よく言われるけど違います(笑い)。例えば「ティガー」は主人公以外、全員むさくるしい男。僕はデビューした頃から女性を描くのが苦手で、迷いながら描いていた。マドンナ的な貞淑な女の子を描くことが多く“動かない”と感じていた。でも1999年、こち亀に下町の男っぽい女性キャラ纏(まとい)を出したら、読者の反応が凄かった。描いていて面白く、こういう女の子を主人公にしたいと思っていた。
――確かにこち亀を読み直すと、当初は男性目線の女性像が多かった気がする。こち亀を描く中で、女性の描き方が変わった?
それは大きい。こち亀は漫画の実験場だった。いろんなキャラを両さんと絡めると面白いので。本来なら読み切りで描きたい作品をどんどんフィードバックした。暴力団組長の妻で、婦警の有栖川京華もそうでした。あの回は両さんが2コマしか出なかった(笑い)。新作の「いいゆだね!」も主人公は信念のある母親。「クリス」は、女性を描くのが苦手だったから、中身を男という設定にした。やはり強い女の人を描きたいというのがある。男がだらしないというのではない。両さんと逆のベクトルで挑戦したかった。こういう世界も持っているのが秋本治という作家だと知ってほしかった。
――ティガーは、こち亀の前に描いていた劇画の雰囲気がある。
時代劇がはやる中で、西部劇はだれも描かない。僕の世代なら「ララミー牧場」「マカロニ・ウエスタン」などが人気で、次は絶対に西部劇を描きたいと思っていた。漫画を描き始めた頃の僕は、リアルな劇画を描いていたのに、こち亀でギャグの方に行っちゃった。ここでかじを戻し、好きな劇画を描きたいと思った。今年亡くなった望月三起也さんの「ワイルド7」へのオマージュもある。望月さんのアクションは、今でも、どの作家もまねできない迫力がある。
――4作とも「強い女性」が主人公か?
唯一違うのが「ファインダー」。カメラのクラブに入ってはいるけど、熱血ではない。京都の亀岡市が舞台で「空がきれいよね」とか、「京都(市)行く?」「でも遠くない?」みたいな日常が描けたらと思ってます。これは“ラブ抜きの少女漫画”。男は一切出ません。
――舞台が亀岡市で、カメラ部所属。亀有と語感が似ている…
それは偶然です。修学旅行で初めて行った時から京都が好き。亀岡は嵯峨野からトロッコ列車で行ったけど、京都の中心に近いのに、畑や山が見える。僕は(亀有生まれで)ふるさとがないけど、亀岡の“(日本人の)原風景”のような景色をいつか描いてみたいと思っていた。町には映画館がなく、(全国チェーンでない)地元のお店ばかりでローカルな感じもいい。亀有も当初は誰も知らなかったでしょ?葛飾と言えば柴又でしたから。マイナーな感じが良くて描いていた。似たような感覚があって、亀岡をクローズアップしたいと思っています。
――両さんは時に、言いにくいド正論を言い愛された。新作にもそんなキャラがいて、世に伝えたいメッセージはある?
今回はエンターテインメントに徹している。でも「いいゆだね!」は下町が舞台で時代も同じだし、両さんが自然に風呂に入っていても大丈夫かな(笑い)。そこで文句やボヤキ言って「あの人また来てるよ」なんて。こち亀テイストで描けそう。両さんは、いつ戻ってくるか分からない。こち亀は僕にとっても大事な作品。今後も機会があればと思っています。頭の片隅にはずっとあります。
「週刊連載40年」を成し遂げた大巨匠だが、意外にも連載デビュー作を描き終えたばかりでもある。こち亀後の挑戦も漫画史に例を見ない形だが、そのまなざしは新人作家のように熱く、新作のアイデアを語る笑顔は心底楽しそうだった。
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