紅白歌合戦、肩ひじ張らずに選んでみたらどうですか!?

[ 2016年12月1日 10:30 ]

「第67回NHK紅白歌合戦」出場歌手発表記者会見に出席した初出場の顔ぶれ
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 【川田一美津の何を今さら】恒例のNHK紅白歌合戦の出場歌手が発表された。その顔ぶれに「今年はイマイチ」と思ったのは私だけだろうか。理由はいたってシンプル。「観たいアーティストが誰もいない」「聴きたい歌も特にない」。当日までに何かサプライズがあるのだろうか。これはあくまで個人的な感想。もちろん、世の視聴者の中には「今から楽しみ」という方が多いのも重々承知している。

 それはさておき、出場歌手に芸能マスコミがいまだに大騒ぎするのは何故だろうか。今回も40回目を目指した和田アキ子の落選が話題になった。もはや国民がこの番組とともに新年を迎えるわけでもあるまい。70年代のように80%を超す視聴率をマークしているのならいざ知らず、今や「紅白」も年末の音楽番組のひとつ。それでも「腐っても鯛」ということか。単に年末の風物詩なのか。

 先日、中野サンプラザで開催された「第43回歌謡祭」(日本歌手協会)に行った。出演したのは、田辺靖雄、あべ静江らベテラン歌手ばかり。会場を埋めたのは、ほとんどが50代以上の大人の音楽ファン。しかし、次から次へ繰り出される往年のヒット曲に場内は大変な盛り上がりだった。終演後はみなさん、ニコニコと楽しそうに足取り軽く帰路についていた。私も数曲聴いただけで、まるで昔の「紅白歌合戦」を観ているようなほのぼのとした気持ちになった。

 以前、「ひまわり娘」の伊藤咲子をインタビューしたことがある。彼女がこんなことを言っていたのを思い出した。「歌っていいですよ。聴くとすぐに時代をタイムスリップすることが出来る。その力はすごい。みなさん、そのために歌を聴くんですよね」。その通りだと思う。「紅白だ、紅白だ」と何も特別視するから選考にも力が入り過ぎるのではないか。それは報道するマスコミも同じ。マンネリでもいいではないか。世に名曲とされる歌、誰もが口ずさめる歌を選べばいい。もちろん、私もそんな単純な作業ではないことは十分に分かっている。

 人は年の瀬にその1年だけを振り返るのではない。何故かそれまで生きてきた自分の半生を思い返すものだ。「あの時は苦しかった、つらかったなあ」、時には「別れたあの娘は今どうしているだろう」。あの時に流行っていた歌を聴き、今ここにいる自分の来し方行く末を再確認するのだ。今年、何万枚売れた話題の歌があっていい。しかし、世代を超えて多くの人たちが心から共感できる歌はもっとあってもいいと思う。

 あれこれ言ってもしょうがない。他に面白そうな番組もなさそうだし、今年も大みそかは紅白を観てやるか。(専門委員)

 ◆川田 一美津(かわだ・かずみつ)立大卒、日大大学院修士課程修了。1986年入社。歌舞伎俳優中村勘三郎さんの「十八代勘三郎」(小学館刊)の企画構成を手がけた。「平成の水戸黄門」こと元衆院副議長、通産大臣の渡部恒三氏の「耳障りなことを言う勇気」(青志社刊)をプロデュース。現在は、本紙社会面の「美輪の色メガネ」(毎月第1週目土曜日)を担当。美輪明宏の取材はすでに10年以上続いている。

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