脚本冴える「ドクターX」なぜ時事ネタ 命テーマもユーモア大事

[ 2016年12月1日 10:00 ]

「ドクターX~外科医・大門未知子~」第8話の1場面。どんな時事ネタやパロディーが飛び出すか(C)テレビ朝日
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 女優の米倉涼子(41)が主演を務め、快進撃を続けるテレビ朝日の人気ドラマ第4シリーズ「ドクターX~外科医・大門未知子~」(木曜後9・00)。物語に挟み込まれる時事ネタやパロディーがスパイスとして冴え渡っている。なぜ時事ネタやパロディーを入れるのか。内山聖子ゼネラルプロデューサーに脚本作りへの思いを聞いた。

◆早くも「PPAP」ネタに!撮影2日前に急きょ脚本を直し

 第1話には「第三者の厳しい目」、第2話には「露天風呂付きの個室で会議」、第3話には「不倫 ゲス男」などの“ホットワード”が登場したが、極め付きは11月17日放送の第6話。神原名医紹介所の所長・神原晶(岸部一徳)が東帝大学病院病院長・蛭間(西田敏行)に、未知子による手術代金などの請求書とメロンを渡す終盤おなじみのシーン。

 神原「覚書です。ペンです。メロンです」
 蛭間「アイ・ハブ・ア・ペン。アイ・ハブ・ア・メロン。アー、ペンメロペンメロペンメロペン」

 元ネタは、世界を席巻している千葉県出身の53歳を自称する謎のシンガー・ソングライター、ピコ太郎の動画「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」。ピコ太郎はペンをリンゴとパイナップルに刺すが、これをメロンに変えたパロディー。放送後はインターネット上で「西田ピコ太郎 吹いた」「旬のネタを使うの早すぎ さすがはドクターX」などと大きな反響を呼んだ。

 ピコ太郎が10月上旬にブレークし、劇中に盛り込むタイミングを見計らっていたが、内山氏は「今しかない」と第6話の撮影2日前に急きょ脚本を著作(エイベックス)の許諾も得て、直した。セリフの変更を伴う西田や岸部、監督と相談し、実現した。

 「長く一緒にやっていて、信頼関係も出来上がっているチームなので、できないならできないの反応も含め、伝達は早いです。その辺の反射神経の鋭さは『ドクターX』チームのいいところですね」

 内山氏によると、当初は時事ネタを入れる余裕はなかったが、第2弾(13年)からレギュラー加入した西田の存在が大きかった。アドリブを連発し、流行の話題を取り入れる土壌が生まれた。脚本家で言えば、第3弾(14年)のメーンライター・林誠人氏がパロディーに長け、第3弾から時事ネタを扱うことが増えた。

◆難しさも痛感「諸刃の剣」それでも「ユーモア交えて伝えたい」

 ただ、時事ネタやパロディーを織り込む難しさも痛感している。「俳優さんとしては非常にやりにくいと思います。真剣に芝居を組み立てていく中でリスクもあるし、パロディーをやるために来ているんじゃないという思いも当然ある。パロディーというのは使い方次第で毒にもなります。単にノリだけで使うんじゃなく、相当考えてやらないと、本当の狙いが伝わらなくなり、ドラマ全体が台なしになる可能性もあります。諸刃の剣です」。“本当の狙い”とは何なのか。

 人の命が作品の根幹テーマとしてあるが「まじめなことを説教くさくやると、意外と伝わらないんです。だから、まじめなことをできるだけユーモアを交えて伝えたい。ユーモアがあるということは、医療ドラマにとっては大事なことなんだと思っています」

 そして、時事ネタは「今の時代に視聴者の皆さんが反応することと同じことに、登場人物たちも反応している。大門未知子や他の先生たちもみんな、視聴者の皆さんと同じ時代を生きている」という構図を生む。俳優の田口トモロヲ(58)によるナレーションには毎シリーズ、西暦が入る(今シリーズは「2016年、白い巨塔の崩壊はとどまるところを知らず…」)。「それぞれの年の『ドクターX』になればいいなと思っています。テレビドラマは基本的には時代と添い寝するぐらいの感じで作るので、常に今を意識しています」

 ドラマは終盤へ。本筋はもちろん、どんな時事ネタやパロディーが飛び出すか、期待される。

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