高松商・長尾監督が「鬼」を辞めた理由「僕の目を見て野球を…」巨人・浅野育てた「やる気にさせる方法」

[ 2023年2月1日 08:00 ]

高松商・長尾監督
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 巨人ドラフト1位・浅野翔吾外野手(18)を輩出した高松商(香川)は、和やかな雰囲気と適度な緊張感の中で練習が進んでいく。それは、公立の同校を9年間で春夏5度の甲子園に導いた長尾健司監督の指導方針が大きく影響している。

 選手と積極的に交流を図る現在の姿からは想像できないものの、「鬼の長尾」と呼ばれた過去がある。同校に赴任する前は、試合に負けたことを理由に罰走の坂ダッシュを課したり、試合場所から10キロ以上離れた学校まで走って帰らせたこともあった。結果が残るのであれば、選手が野球を楽しんでいないことには目をつむった。

 「ある程度強くなった代わりに、選手が僕の目を見て野球をするようになった。練習をするモチベーションが先生に怒られないことになる。監督と向き合っているようでは、野球を楽しんだり、研究しようとはならない」

 昔ながらの指導方針は、ある先生が口にした教えによって変わることになる。「生徒が授業中に寝てしまうのは、授業が面白くないから。生徒を怒らず、自分を叱りなさい。もっと知りたいと思わせるのが先生の仕事だよ」。野球にも通じる教えではないかと考えた。選手のミスを叱るだけではなく、野球への関心を高められるように仕向けていく必要があると気付かされた。

 現在、最も大切にしていることは「選手たちをやる気にさせること」。私生活に関することは厳しく教育する一方で、プレー中のミスを叱ることはなくなった。音楽は米津玄師やAdoを聴き、高校生に人気のあるお笑い芸人もチェックする。流行に敏感でなければ、高校生の心情は理解できないのだと言う。

 巨人・浅野が高校3年間で最も成長した点は、「感情の起伏がなくなったこと」だと言う。「凡退しても怒りを顕わにせず、真剣なまなざしで野球に向き合い続けてくれました」。浅野は誰よりも声を出し、後輩に優しく、部員全員から愛される主将だったと聞く。選手に寄り添う長尾監督の姿勢は、逸材を伸び伸びとプレーさせ、非凡な才能を花開かせることへとつながっていった。(記者コラム・河合 洋介)

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